研究課題/領域番号 |
23K06094
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高田 剛 東北大学, 医学系研究科, 大学院非常勤講師 (20733257)
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研究分担者 |
松永 哲郎 東北大学, 医学系研究科, 講師 (00723206)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | NADPHオキシダーゼ / NO合成酵素 / 超硫黄分子 / 活性酸素種 / 一酸化窒素 |
研究実績の概要 |
NADPHオキシダーゼ(NOX)やNO合成酵素(NOS)は、NADPHから得られた電子を酸素に渡すことによりROSやNOを生成し、感染防御において重要な役割を果たすとされてきた。しかし、低酸素状態にある感染局所などにおいて十分量のROSやNOが生成されるのかという問題は極めて重要であるが手付かずの課題であった。我々は、「NOXおよびNOSの真の生成物は何なのか」という問いに対して超硫黄分子に着目し解析を進めた結果、NOXとNOSにおいて分子状酸素よりも超硫黄分子の方が親和性の高い優れた基質であることを見出した。本研究では、NADPHによって超硫黄分子を酸化還元・活性化する機能特性に基づき、NOXとNOSを新しい硫黄代謝酵素「NADPH:Sulfur Oxidoreductase (NSOR)」として再定義する。本研究では、NOXとNOSによる超硫黄代謝(NSOR)機構とNSOR活性による生理機能の解明を目的とした。本年度では、超硫黄分子カプセルを用いて、広く自然界に存在する超硫黄分子が哺乳類・ヒトの生体内において、当初の想定を超える高濃度で蓄積していることが判明した。興味深いことに、細胞内の超硫黄分子は、内皮型NOS(eNOS)によって生成され、脂肪細胞内の脂肪滴に高濃度に蓄積することで、脂質過酸化を効率よく阻害する可能性を見出した。これらの成果は、NOXおよびNOSが超硫黄代謝酵素NSORであるという概念の変革を目指し、NSOR とその超硫黄代謝系が関わる疾患の診断・治療や創薬に向けた基盤的研究を展開する上で極めて重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超硫黄分子カプセルを用いた超硫黄代謝解析により、広く自然界に存在する環状S8硫黄が哺乳類・ヒトの生体内において、当初の想定を超える高濃度で蓄積していることを見出した。本研究の当初目的である、NOXとNOSによる超硫黄代謝(NSOR)機構とその生理機能の解明に関する知見をさらに深めることができ、研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
NOXとNOSによる超硫黄代謝(NSOR活性)機構とその生理機能を詳細に明らかにする。具体には、NSOR発現細胞における硫黄メタボローム解析として、超硫黄分子を含む全ての硫黄代謝物の網羅的プロファイリングを各種NOXおよびNOS発現細胞において行う。加えて、NSOR活性制御メカニズムの解析として、予備的な検討により、本反応は、酸化型システイントリスルフィド(CysSSSCys)や酸化型N-アセチルシステイントリスルフィド(NACSSSNAC)を添加した場合には観察されず、グルタチオン構造を持つ超硫黄分子に特異的であることを確認している。NSOR活性触媒部位を特定し、NSOR活性を欠失した変異体を作成・解析する。さらに、NSOR活性による感染防御機能の解析として、予備的に、サルモネラ(ネズミチフス菌)を感染させたマウス骨髄由来マクロファージにおいて、GSSSG添加により抗菌活性の増強が観察されている。そこで、NOXおよびNOSの阻害剤や欠損マウスを用いて、NSORによる超硫黄分子産生を介した感染防御機能を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に行った海外留学により実支出額が少なくなったため、次年度使用額が生じた。使用計画として、NOXとNOSによるNSOR超硫黄代謝機構の解明に向けた超硫黄メタボローム解析を、各種NOXおよびNOS発現細胞において行う。加えて、NSOR活性を欠失した変異体を作成し解析することにより、NSOR活性制御機構および硫黄カテネーション活性の触媒部位を明らかにする。
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