研究課題/領域番号 |
23K06106
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
高橋 美帆 同志社大学, 生命医科学部, 助教 (00446569)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 志賀毒素2 / エクソソーム / 細胞内小胞輸送 |
研究実績の概要 |
O157:H7等の腸管出血性大腸菌の主要な病原因子であるShiga toxin(Stx)にはStx1とStx2のサブタイプが存在する。両者の細胞毒性は同程度だが、個体レベルではStx2の方が数百倍強毒であることが知られている。Stx2は臨床的にも症状の重篤化と深く関係することから、Stx2に対する阻害剤開発は急務である。これまでに、Stx2に特徴的な細胞内小胞輸送機構が存在し、本経路を経由してStx2が積極的に細胞外に放出されること、このとき一部のStx2はエクソソーム結合型Stx2(exo-Stx2)であること、さらにこのexo-Stx2がマウス個体での強毒性に直接関与していることを明らかにした。また、複数種のプロテインキナーゼがStx2の細胞外遊離およびexo-Stx2産生に関わる細胞内輸送に寄与している可能性が考えられた。そこで本研究ではGSK3βに着目し、1)Stx感受性Vero細胞にsiRNAを添加しGSK3βをノックダウンした際の、Stx2の細胞外放出量をI125標識Stx2を用いて測定した。その結果、GSK3βをノックダウンした場合に有意にStx2の細胞外放出量が減弱することが示された。2)GSK3β阻害剤Indirubinを用いて1)と同様の検討をしたところ、有意にStx2の細胞外放出量が抑制された。そこで次に、3)マウスを用いてStx2致死性に対するindirubinの効果を検討した。マウス尾静脈からStx2を 3-10 ng投与すると4日以内に死亡した。そこでIndirubin (10mg/kg)を腹腔内投与したのち、Stx2を尾静脈投与した。その結果、Indirubin投与群では明らかにStx2の個体毒性が抑制されマウスは延命していることが示された。以上よりGSK3betaはマウス個体でみられるexo-Stx2による強毒性発現に寄与すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Stx2の細胞外放出に関わる細胞内小胞輸送にプロテインキナーゼGSK3betaが関与していることを証明したこと、さらにマウスを用いた検討で、GSK3betaがStx2の個体レベルでの強毒性発現に寄与していることを証明することができた点は大きな進展と考えている。一方で、Stx2の細胞内小胞輸送機構の詳細な解析、とくにRab11が関与する輸送に関しては、現在も解析が進行中である。以上から進捗状況は概ね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
GSK3betaの関与が明らかになったことから、当初の計画に加え、GSK3betaが関与する細胞内exo-Stx2産生機構の詳細を明らかにしてゆく。本研究では、約250種のキナーゼに対する基質ペプチドを,数百のレベルでスライドグラス上にスポット合成する技術を確立している。そこでsiGSK3beta処理した細胞をStx2刺激し、そのライセートを酵素源として用い、スライドグラス上でインビトロリン酸化反応を行う。Stx2刺激によってGSk3beta依存的に活性化するプロテインキナーゼ群を網羅的解析し、GSK3betaとの関連を明らかにする。
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