研究課題/領域番号 |
23K06116
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
伊藤 孝司 自治医科大学, 医学部, 客員教授 (00184656)
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研究分担者 |
月本 準 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学域), 特任助教 (70966671)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ガラクトシアリドーシス / シアリドーシス / カテプシンA / ノイラミニダーゼ1 / 遺伝子治療 / アデノ随伴ウイルスベクター |
研究実績の概要 |
ガラクトシアリドーシス(GS)とシアリドーシス(SiD)は、各々リソソーム酵素のカテプシンA(CTSA)とノイラミニダーゼ1(NEU1)遺伝子の潜性変異が原因で、NEU1活性が欠損し、その基質である末端シアル酸含有糖鎖の体内過剰蓄積と、ミオクローヌス発作等の中枢症状や肝脾腫等の末梢症状を伴う遺伝性ライソゾーム病である。発生頻度は、10万出生児当たり1人程度であるが、日本人GS症例は世界の30%以上を占め、厚労省の指定難病でもある。しかし両疾患に対する根本治療法は無い。研究代表者伊藤と分担者月本は、これまでに、日本人若年・成人型GS患者に特徴的なスプライシング異常誘導型変異を導入し、ミオクローヌスを発症するGSモデルマウスの樹立に成功している。また哺乳類培養細胞でヒト正常NEU1遺伝子を過剰発現する際に細胞内NEU1結晶が生じるが、結晶を生じない改変NEU1(modNEU1)を発明した。今年度は、modNEU1と正常CTSA遺伝子を二重搭載したアデノ随伴ウイルスAAVベクター(AAV9,AAV5またはAAVPHP.eB)を作製し、投与量1~3x10e13 vg/kg体重で7週齢GSマウスの脳室内に単回投与したところ、発症したミオクローヌス発作を投与後3週までに抑制できることを明らかにした。この結果は、GS患者の脳脊髄液内にAAV-modNEU1/CTSAベクターを脳脊髄液内に単回投与することにより、発症後の中枢神経症状を治療できることが示唆された。さらに、SiD患者で同定された変異NEU1のノックインマウス系統を樹立し、同ホモ個体がNEU1活性を完全欠損し、GSマウスと同様に、5週齢頃からミオクローヌス発作を発症し、SiDモデルマウスとして利用できることを明らかにした。今後、両モデルマウスに対するAAV-modNEU1/CTSAベクターの脳室内単回投与の有効性を検討していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
独自に作製した、Ctsaスプライシング異常を誘導する変異ノックインマウスは、ミオクローヌス発作等の中枢神経症状を示すGSモデルマウスとして利用できるが、今年度は、独自に発明した改変型NEU1と正常CTSA遺伝子を二重搭載したAAV9-、AAV5-またはAAVPHP.eB-modHEXBをGSモデルマウスの脳室内に単回投与することにより、いずれも発症したミオクローヌス発作を抑制でき、GSの中枢神経症状の治療法として、AAV-modNEU1/CTSAベクターを脳脊髄液中に単回投与するin vivo遺伝子治療法に適用できることが示唆されたため。 また新規に作製した、重症型SiD患者由来変異ノックインマウスが、Neu1活性の欠損と、GSマウスと同様のミオクローヌス発作を示したことから、同中枢神経症状の発症がNEU1欠損に基づくこと、さらに、AAV-modNEU1/CTSAベクターが、GSおよびSiDの両疾患に対する治療用シーズとして応用できる可能性を示すことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
近年、神経難病の脊髄性筋萎縮症(SMA)のin vivo遺伝子治療に臨床応用されている治療用製剤Solgensmaの母体でもあるAAV9関連ベクターに、modNEU1/CTSA遺伝子を二重搭載し、GSおよびSiDモデルマウスの脳室内に単回投与する際の、ミオクローヌス発作やオープンフィールドにおける行動異常に対する抑制効果とその用量依存性を評価し、単一AAV9-modNEU1/CTSAシーズを用いる、GSおよびSiDの両疾患に対する新規in vivo遺伝子治療法開発を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
NEU1欠損症モデルマウス(2系統)の飼育維持を業者に委託しているが、R6年度の維持費に不足が予想されたため、一部を繰り越した。R6年度にマウス2系統の凍結胚の作製を予定しており、その一部として支出する計画である。
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