研究課題/領域番号 |
23K06128
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
多留 偉功 北海道大学, 薬学研究院, 准教授 (30533731)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | シナプス / 細胞骨格 / 線虫 / アダプター分子 |
研究実績の概要 |
脳神経系の情報処理機能は、神経細胞間のシナプスと呼ばれる接着構造が適切に形成・維持され、また時に除去されることで実現されている。神経伝達物質の放出を担うプレシナプス(シナプス前部)構造の除去が発生過程あるいは加齢に伴ってどのように制御されているかについては不明な点が多く、その分子機構の理解は神経科学の重要な課題である。代表者らはモデル動物である線虫C. elegansにおいて、微小管の不安定化に起因したプレシナプス異常に関与する二つのアダプター分子を同定した。本研究は神経プレシナプス除去において、これらMAGUKファミリー分子およびLIMドメイン分子がはたす役割とその作用分子機構を明らかにすることを目的とする。さまざまなシナプス異常変異体との遺伝学的相互作用を検討した結果、これらのアダプター分子は微小管不安定化に伴うプレシナプスの除去に対して選択的に関わることが示唆された。アダプター分子の結合分子から予想されるアクチン線維制御との関わりについて遺伝学的に検討し、アダプター分子の作用が当初想定されたアクチン制御とは一部異なる経路による可能性を明らかにした。さらに遺伝子導入による解析から、MAGUKファミリー分子は主に下皮で発現するものの、神経細胞における機能がプレシナプス除去に関わる可能性が示された。シナプス形成・維持・除去の異常は種々の精神疾患・神経疾患に密接に関与しており、本研究はそれらの発症機序を分子レベルで理解する基盤として、治療法開発への貢献が期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微小管不安定化にともなうプレシナプス異常に対するアダプター分子の作用について、遺伝学的相互作用解析と発現解析の結果から作用機序の大枠が捉えられつつある。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度の遺伝学的解析の結果をふまえてより詳細な検証を行うとともに、分子作用機序に関してタンパク質レベルで検討していく方策である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
消耗品費・旅費・その他等の支出が当初見込みに対して抑えられたこと、実験材料の保存に必要な設備備品が代替使用できたことから、次年度使用額が生じた。進捗状況に対応し、物品費・謝金および次年度以降の成果発表などを中心に使用する計画である。
|