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2024 年度 実施状況報告書

大脳皮質視覚野臨界期の神経可塑性における乳酸代謝の寄与の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23K06151
研究機関鹿児島大学

研究代表者

神戸 悠輝  鹿児島大学, 医歯学域医学系, 講師 (60549913)

研究分担者 玉川 直 (中川直)  鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (20611065)
那須 雄介  東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 客員共同研究員 (60831328)
佐藤 達雄  鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (90830993)
研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワード視覚 / 神経可塑性 / 乳酸 / アストロサイト
研究実績の概要

本年度は、眼優位性可塑性モデルの構築およびその評価系の確立を行った。ヒトおよびマウスは生後に開眼し、これに伴い大脳皮質視覚野において神経ネットワークの大規模な取捨選択が行われる。この期間は「臨界期」と呼ばれ、マウスにおいては生後約40日までと知られている。臨界期において片眼を遮蔽すると、視覚野内で遮蔽した眼に反応するニューロンの数が減少し、開いた眼に反応するニューロンが増加する。この変化が眼優位性可塑性の誘導を示すものである。眼優位性可塑性を評価するためには、大脳皮質視覚野に存在する両眼性ニューロンを識別し、その神経活動を測定する必要がある。
そこで、本研究では、マウスの大脳皮質一次視覚野直上の頭蓋骨を除去し、スライドガラスを留置する手法を採用した。さらに、スライドガラスには、後の実験で脳内へガラスピペットを刺入するための穴を設けた。手術からの回復期間を設けた後、イソフルラン麻酔下において、二光子顕微鏡下にマウスの頭部を固定した。次に、スライドガラスの穴を通じて、カルシウム感受性蛍光指示薬Cal520AMを充填したガラスピペットを脳内に挿入し、大脳皮質一次視覚野の細胞を標識した。その後、マウスの麻酔を解除し、二光子顕微鏡を用いてCal520AMの蛍光強度変化をモニターしながら、視覚刺激を与えた。視覚刺激に応答し、複数の神経細胞において蛍光強度の増加が観察された。
以上の結果から、覚醒下マウスにおいて、視覚刺激に伴う神経活動を単一ニューロンレベルでモニターすることが可能であることを確認した。本手法は、眼優位性可塑性の評価に有用な技術基盤を提供するものであり、今後の研究の発展に貢献すると考えられる。

現在までの達成度
現在までの達成度

2: おおむね順調に進展している

理由

2023年度に作成したカルモジュリンキナーゼ2プロモーターによって細胞外緑色乳酸センサーを発現するアデノ随伴ウイルス(AAV)を、マウスの一次視覚野に感染させた。その後、緑色蛍光強度をモニターしながら乳酸を脳室内に投与したところ、乳酸の濃度依存的な蛍光強度の増加が観察された。この結果から、2023年度に作成したAAVが適切に機能することを確認した。
また、2023年度には、シングルセルエレクトロポレーション法を用いてランダムなニューロンに細胞外緑色乳酸センサーを発現するプラスミドを導入し、同タンパク質がニューロン内で発現することを確認した。次に、乳酸センサーを発現するニューロンを有するマウスを二光子顕微鏡下に固定し、スライドガラスを通して乳酸センサーを発現する細胞を観察しながら、覚醒下において視覚刺激を与えた。しかし、蛍光強度の有意な変化を捉えることはできなかった。一次視覚野のニューロンの活動は、視覚刺激の位置や方位に選択性があることが知られており、特定の位置および方位で発火するニューロンはごく少数であることが、研究代表者らの先行研究により明らかになっている。本実験では、エレクトロポレーションがランダムなニューロンに対して行われたため、視覚刺激に対して無反応な細胞が標識された可能性が高い。そこで、本課題を克服するため、以下に述べる対策を講じ、次年度の研究を遂行する予定である。
眼優位性可塑性モデルの手術はほとんど確立している。

今後の研究の推進方策

2024年度において、ランダムなニューロンにエレクトロポレーションを実施した場合、視覚刺激に伴う細胞外乳酸濃度変動を捉えることができなかった。これは、視覚刺激に対して無反応な細胞が乳酸センサーで標識されたことが原因である可能性が高い。そこで、AAVを用いて一次視覚野のニューロンに広く乳酸センサーを発現させる手法を検討する。この実験では、AAVを感染させる際のタイミングが極めて重要である。AAVを感染させるために頭蓋骨や硬膜に穴を開けると、硬膜が厚くなり、二光子顕微鏡での観察が困難になる可能性がある。そこで、生後1日目のマウスの大脳皮質広域にAAVを感染させる方法を採用する。この方法であれば、針を刺入するポイントを一次視覚野から外すことが可能となり、一次視覚野の可視性を維持できると考えられる。
別の方法として、研究代表者らのグループが以前に確立した生体脳狙い撃ちシングルセルエレクトロポレーション法を活用する。すなわち、シングルセルエレクトロポレーションの前にCal520AM標識を行い、標識されたニューロンの中から視覚刺激に強く応答するニューロンを選別する。その後、選抜されたニューロンに対してシングルセルエレクトロポレーションを実施し、乳酸センサーを発現させる。
これらの方法を用いることで、視覚刺激に強く応答する神経細胞における細胞外乳酸濃度の変動を詳細に観察する。また、赤色乳酸センサーについても同様に発現させ、2色の蛍光センサーを用いた同時観察を可能にする。

次年度使用額が生じた理由

今年度は、新たに二光子顕微鏡のセットアップを構築し、実験の効率向上を目的として電動XYZステージを導入した。これに伴い、当初の年度予算を大きく消費することとなり、実験計画の遂行に支障をきたす可能性が生じた。
この状況を回避するため、前倒し申請を行い、50万円を今年度予算に追加で組み入れた。現時点でそのうち約90%が未使用であり、来年度においても計画通りに実験を遂行できる見通しである。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2025 2024 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] サウスカロライナ医科大学(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      サウスカロライナ医科大学
  • [雑誌論文] The pivotal role of PACAP/PAC1R signaling from the anterior insular cortex to the locus coeruleus on anxiety-related behaviors of mice2024

    • 著者名/発表者名
      Nguyen Thi Thu、Hashiguchi Kohei、Waschek James A.、Miyata Atsuro、Kambe Yuki
    • 雑誌名

      Neurochemistry International

      巻: 180 ページ: 105879~105879

    • DOI

      10.1016/j.neuint.2024.105879

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Functional diversity of dopamine axons in prefrontal cortex during classical conditioning2024

    • 著者名/発表者名
      Abe Kenta、Kambe Yuki、Majima Kei、Hu Zijing、Ohtake Makoto、Momennezhad Ali、Izumi Hideki、Tanaka Takuma、Matunis Ashley、Stacy Emma、Itokazu Takahide、Sato Takashi R、Sato Tatsuo
    • 雑誌名

      eLife

      巻: 12 ページ: RP91136

    • DOI

      10.7554/eLife.91136.3

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Encoding of self-initiated actions in axon terminals of the mesocortical pathway2024

    • 著者名/発表者名
      Ohtake Makoto、Abe Kenta、Hasegawa Masashi、Itokazu Takahide、Selvakumar Vihashini、Matunis Ashley、Stacy Emma、Froebrich Emily、Huynh Nathan、Lee Haesuk、Kambe Yuki、Yamamoto Tetsuya、Sato Tatsuo K.、Sato Takashi R.
    • 雑誌名

      Neurophotonics

      巻: 11 ページ: 033408

    • DOI

      10.1117/1.NPh.11.3.033408

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] A dendritic basis for sensory tuning in the primary visual cortex2025

    • 著者名/発表者名
      神戸悠輝
    • 学会等名
      APPW2025
  • [備考] Sato Lab

    • URL

      https://www3.kufm.kagoshima-u.ac.jp/pharmaco/

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公開日: 2025-12-26  

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