研究課題/領域番号 |
23K06152
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
久野 篤史 札幌医科大学, 医学部, 教授 (30468079)
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研究分担者 |
藤谷 直樹 札幌医科大学, 医学部, 講師 (10374191)
野島 伊世里 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (10827398)
細田 隆介 札幌医科大学, 医学部, 助教 (20749428)
矢野 俊之 札幌医科大学, 医学部, 講師 (40444913)
田中 希尚 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (60533362)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 急性腎障害 / 糖尿病 / ネクロプトーシス / オートファジー / RIPK3 |
研究実績の概要 |
(1) 尿細管障害マーカーであるKIM-1の腎組織におけるmRNAレベルを定量PCR法により評価した。KIM-1 mRNAレベルは非糖尿病・糖尿病ラットともに腎虚血再灌流(I/R)により増加したが、その上昇の程度は糖尿病でより強かった。 (2) 免疫染色では、糖尿病ラットのI/R後の腎で非糖尿病と比較してネクロプトーシスに重要なRIPK3の発現が尿細管細胞で増加していた。非糖尿病ラットでも、オートファジー阻害薬投与によりI/R後の腎尿細管細胞でRIPK3の発現が増加した。一方、糖尿病ラットにオートファジー活性化薬を投与すると、RIPK3の染色性が低下した。 (3) RIPK3の発現変化が転写制御によるものかどうかを、定量PCR法によるmRNA定量法により評価した。RIPK3 mRNAレベルは非糖尿病・糖尿病ラットともにI/Rにより増加したが、その程度は糖尿病でより大きかった。非糖尿病でもオートファジー阻害薬の投与によりRIPK3 mRNAレベルのI/Rによる増加は亢進した。逆に糖尿病ではオートファジー活性化薬によりRIPK3 mRNA レベルが低下した。 (4) RIPK1 mRNAレベルは腎I/Rによる変化が明らかではなかった。一方、MLKL mRNAレベルは非糖尿病・糖尿病ともに腎I/Rにより増加したが、その程度には両者で差を認めなかった。 以上より、腎虚血再灌流による尿細管細胞の障害は糖尿病でより強いこと、RIPK3は急性腎障害における細胞死が生じるとされている尿細管細胞で発現が糖尿病により増加すること、またその増加は転写レベルの変化に依る可能性が考えられた。またRIPK3のmRNA発現量がオートファジーにより負に制御されていると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
糖尿病による腎虚血再灌流でRIPK3が増加する機序として、オートファジー障害による転写亢進を介する点が明らかとなった点。
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今後の研究の推進方策 |
(1) ネクロプトーシスに重要なMLKLのノックアウトマウスおよび野生型マウスにおいて糖尿病モデルを作成し、糖尿病による急性腎障害の悪化がネクロプトーシス経路を介するかを評価する。 (2) オートファジーによるRIPK3の発現制御の標的部位が転写レベルである可能性が示唆されたため、まずは腎虚血再灌流によるRIPK3の転写制御を明らかにする。それら転写に関与する因子がオートファジーにより制御を受ける点に着目して評価を勧める。この検討のために、培養近位尿細管細胞株を用いた低酸素・再酸素化モデルを確立し、オートファジーを阻害・活性化によるRIPK3の転写制御の変化を評価し、オートファジーの標的蛋白を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の遺伝子発現の実験に必要な試薬を注文しようと考慮したが、価格が残金では不十分だったので、繰り越し次年度での購入を考慮したため。繰り越し分は、次年度の遺伝子発現の評価のための試薬購入に充てる予定である。
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