研究課題/領域番号 |
23K06156
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
平松 正行 名城大学, 薬学部, 教授 (10189863)
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研究分担者 |
衣斐 大祐 名城大学, 薬学部, 准教授 (40757514)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ベタイン / トリメチルグリシン / GABAトランスポーター2 / GAT2 / アミロイドβタンパク質 / アルツハイマー型認知症 / 神経保護作用 |
研究実績の概要 |
アルツハイマー型認知症(AD)の脳内では、アミロイドβ(Aβ)タンパク質の蓄積とタウタンパク質の異常なリン酸化が認められる。我々はこれまでに、Aβの活性フラグメントであるAβ(25-35)をマウスの脳室内に投与するとマウスの認知機能が障害されること、この障害はトリメチルグリシン(ベタイン)の前処置により抑制されることを明らかにしている。さらに、培養細胞を用いた研究では、Aβ(25-35)または酸化ストレスを引き起こす過酸化水素水をマウス神経芽細胞腫Neuro2A細胞に処置すると、生存細胞率が低下したが、ベタインを前処置しておくとこの生存細胞率の低下が抑制された。そこで本研究では、ベタインのトランスポーターとして知られているGABAトランスポーター2(GAT2)の発現とベタインの細胞内への取り込み量の関係を調べるために、アデノ随伴ウィルス(AAV)を利用し、海馬錐体細胞におけるGAT2タンパクの過剰発現またはノックダウン(KD)を行った。また、Neuro 2A細胞の糖鎖修飾がGAT2の機能に与える影響も、引き続き検討した。GAT2過剰発現またはノックダウンを施したAβ脳室内投与マウスおよび遺伝的にAβが蓄積しやすい3×Tgマウスの認知機能を行動薬理学的解析により調べた。以上の結果から、ベタインは神経細胞に選択的に取り込まれ、神経保護効果を示す可能性が示唆された。 また、ADモデルマウス海馬において、caspase-3が記憶障害の開始と相関があることが報告されている。そこで、Aβ(25-35)投与5日後、記憶障害が見られ始める時点におけるcleaved-caspase-3の発現量を測定した。Aβ(25-35)投与により発現量が増加する傾向は見られたが、有意な変化ではなかった。この発現量の経時的変化を再確認し、その時にベタインの作用について検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症による研究環境の変化により、年度を跨いだ研究の継続性がうまくできておらず、実験を担当する学生の研究時間が以前よりも大幅に減少、また、技術の伝承がうまくいっておらず、当初計画していた進捗よりも遅れている。特に、マウスを繁殖して利用する実験が遅れていることもあり、十分な研究活動が行えなかった。進捗はやや遅れているが、着実に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、GAT2遺伝子をノックダウンするためのGAT2 shRNAを搭載したAAVの設計・作成受託費およびマウス脳内の神経毒性を調べるために、TUNELおよびFuoro-Jade染色キットを購入する。さらに、GAT2の翻訳後修飾に関わるアミノ酸変異を挿入するため、遺伝子変異挿入キットを購入し、神経障害下におけるGAT2の役割を調べる。 また、ベタインの細胞内取り込みやGAT2依存性を生体レベルで調べるため、マウス海馬にAAV-GAT2 shRNAを投与し、GAT2をKDした際の、海馬神経細胞におけるFAM-ベタインの取り込み量を調べる。また、BHMT遺伝子をGAT2発現細胞得意的に発現抑制することにより、GAT2に取り込まれたベタインが、メチオニンサイクルで利用されない場合のベタインの神経保護効果について検証する。GAT2 遺伝子プロモーター制御下にBHMTをKDするshRNAを搭載したAAV(Gat2:Bhmt-shRNA)を作製し、ADマウス海馬に投与する。その後、ベタインによる認知機能障害や神経細胞の生存・形態異常の抑制作用の変化を調べる。必要であれば、葉酸/ビタミンB12経路を阻害し、メチオニンサイクルを破綻させた際の影響も調べる。さらに、神経障害や、神経保護に関わる細胞内タンパク質の発現変化とそれらに対するベタインの効果をウェスタンブロットで確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
以前の科研費の研究が、次年度に回ったため、この年度の研究の進捗が遅れた。
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