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2023 年度 実施状況報告書

網膜色素変性における網膜循環障害機序の解明とそれによる新規予防・治療薬の創出

研究課題

研究課題/領域番号 23K06171
研究機関帝京大学

研究代表者

森 麻美  帝京大学, 薬学部, 講師 (80453504)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワード薬理学 / 微小循環 / 網膜色素変性 / 網膜血管緊張度 / 網膜神経傷害
研究実績の概要

網膜色素変性は、視細胞における遺伝子変異により、神経変性が徐々に進行して引き起こされる眼疾患であり、我が国においては緑内障に次ぐ後天性失明原因の第 2 位の疾患であるにも関わらず、未だ有効な治療法は確立されていない。網膜への血流は、網膜内層を網膜血管が、網膜血管の存在しない網膜外層は脈絡膜血管が供給している。網膜神経変性疾患の 1 つである網膜色素変性では、網膜血管の存在しない網膜外層の視細胞である桿体・錐体細胞が障害されるが、網膜内層に存在する網膜血管の血流低下も報告されている。そのため、網膜色素変性で早期に生じる網膜循環障害の正常化が、視覚障害の発症や進行を抑制するために非常に重要であると考えられる。しかし網膜色素変性において網膜循環障害が引き起こされる機序の詳細は不明である。
本研究では、ツニカマイシン誘発網膜色素変性ラットを用い、網膜色素変性に随伴する網膜循環障害の発症機序を明らかにするとともに、それに関与する因子を同定し、網膜循環を正常化することで、最終的には網膜循環改善と神経保護の両作用を併せ持つ予防・治療薬の探索を行うことを目的とする。
これまでに、ツニカマイシン硝子体内投与後の視機能は緩徐に低下していき、投与 7 日後をピークとして 14 日後までにさらなる視機能の低下がみられなかったこと、投与 14 日後の網膜色素変性ラットにおいて、アセチルコリン静脈内投与による網膜血管拡張反応が減弱することが明らかになった。本研究成果は、視機能の低下が緩徐である早期の網膜色素変性において、網膜深層の神経傷害であるにもかかわらず、網膜表層の網膜血管拡張機能障害が起こることを示唆している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでに、ツニカマイシン硝子体内投与後の経時的な網膜電図の測定により、視機能が徐々に低下していくこと、その低下は緩徐であり、ツニカマイシン投与 7 日後をピークとして、14日後までにさらなる低下は見られないことを明らかにした。また、投与 14 日後の網膜色素変性ラットにおいて、アセチルコリンによる内皮依存性の網膜血管拡張反応が減弱することを見出した。

今後の研究の推進方策

①網膜色素変性ラットの血管作動性物質による網膜血管拡張機能の評価:ツニカマイシン硝子体内投与 14 日後における NO 供与体、アドレナリン β2 刺激薬、アドレナリン β3 受容体刺激薬、プロスタグランジン I2、ホスホジエステラーゼ 4 阻害薬、電位依存性 Ca2+ チャネル遮断薬などの静脈内投与による網膜血管拡張反応を in vivo 網膜血管機能実験により評価する。また、ツニカマイシン硝子体内投与 7 日後におけるアセチルコリンや NO 供与体などの静脈内投与による網膜血管拡張反応の評価も同様に行う。
②網膜色素変性ラットの網膜神経刺激による血管拡張機序:ツニカマイシン誘発網膜色素変性ラットの網膜血管拡張能について、網膜神経あるいはグリア細胞刺激を介した neurovascular unit の破綻が生じるか否かについて、N-メチル-D-アスパラギン酸 (NMDA) あるいは NO 供与体を用いて in vivoで評価する。NMDA あるいは NO 供与体の硝子体内投与による網膜血管拡張反応が減弱した場合には、その機序の詳細についても明らかにする。
③網膜色素変性ラットの網膜構成細胞構造の評価:ツニカマイシン誘発網膜色素変性ラットの網膜フラットマウント標本及び網膜組織切片を作製し、免疫蛍光染色法により神経細胞及びグリア細胞の各種タンパク発現と構造変化を評価する。

次年度使用額が生じた理由

2023年度は、網膜血管拡張機能の評価において、ツニカマイシン投与 14 日後に重点をおいて検討し、7 日後の評価に用いる動物や試薬の購入を次年度に見送ったため。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] The role of microRNAs related to apoptosis for N-methyl-d-aspartic acid-induced neuronal cell death in the murine retina.2024

    • 著者名/発表者名
      Sone K, Mori A, Sakamoto K, Nakahara T
    • 雑誌名

      Int J Mol Sci

      巻: 25 ページ: 1106

    • DOI

      10.3390/ijms25021106.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 緑内障及び網膜色素変性モデルマウスの網膜傷害に対するカンナビノイド受容体刺激の影響2024

    • 著者名/発表者名
      森 麻美,上園 崇,恒岡 弥生,坂本 謙司
    • 学会等名
      日本薬学会第144年会
  • [学会発表] PDE4 阻害薬は NMDA誘発網膜神経傷害を抑制する2023

    • 著者名/発表者名
      森 麻美,深澤 梨咲子,上園 崇,恒岡 弥生,坂本 謙司
    • 学会等名
      第148回日本薬理学会関東部会
  • [学会発表] TRPV1受容体刺激はマウスツニカマイシン誘発網膜傷害を抑制する2023

    • 著者名/発表者名
      小林 晨宇,森 麻美,恒岡 弥生,上園 崇,坂本 謙司
    • 学会等名
      次世代を担う創薬・医療薬理シンポジウム 2023
  • [学会発表] AM404のツニカマイシン誘発網膜傷害保護作用に対するTRPV1受容体遮断薬A784168の影響2023

    • 著者名/発表者名
      坂本 謙司,赤平 淳美,森 麻美,恒岡 弥生,上園 崇
    • 学会等名
      第43回日本眼薬理学会
  • [学会発表] AM404 はカンナビノイド CB1 受容体と TRPV1チャネルを介してNMDA 誘発網膜神経傷害を抑制する2023

    • 著者名/発表者名
      森 麻美,上園 崇,恒岡 弥生,坂本 謙司
    • 学会等名
      第97回日本薬理学会年会

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公開日: 2024-12-25  

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