研究課題
申請書に従い,大腸菌K-12株を親株として薬剤感受性株,耐性株の作出を進めている。まず,翻訳阻害活性を有する当研究所所有の化合物の解析のため,種々の翻訳阻害剤耐性株,具体的にはRNA methylase導入株やribosomal protein変異株を作出し,当研究所で単離した翻訳阻害剤cycloimidamicinがこれらの耐性株にも有効である事を確認した。このことはcycloimidamicinが既存の翻訳阻害剤とは異なる新しい作用機序を有している可能性を示している。また遺伝子改変株構築のための実験系を構築している。まずは温度感樹脂プラスミドを使用した,2回相同組換え法による遺伝子改変株作成の実験系構築を試みた。当初遺伝研より分与を受けたpTH19krに温度感受性変異を用いていたが,複製可能とされる27℃においてもプラスミドが著しく不安定であった。調査の結果,このプラスミドは安定化領域とされる部分を欠失していることが判明したため,同じrepliconを持つ市販のプラスミドpMW119を用いて系を構築した。また,一般的な大腸菌が保持不可能なR6K repliconを有するプラスミドpJP5903を用いた系も作出した。これらの系を用いて3株の薬剤感受性株,具体的にはトランスポーター遺伝子tolCの欠損株,細胞外膜リポ多糖の糖鎖合成に関与するrfaCを欠損する株,そしてリポ多糖の細胞外膜外葉への輸送に関わるlptD遺伝子に変異を有する株(lptD4213株)を作成した。作成した株を用いて作用機序未知の薬剤に対する耐性株の作出を進めている。また当初の予想通り,lptD4213株は形質転換効率が極めて悪いため,その効率化についても順次進めている。
2: おおむね順調に進展している
変異株作成におけるプラスミドの問題(既述)などのもんだいもにも遭遇したが,代替案もある事から,研究推進に大きな支障にはなっていない。また当研究所で単離した翻訳阻害剤cycloimidamicinについては本研究の知見も含めた文献を発表できた事から,対外的な結果も残せていると考えている。
現時点では概ね計画通り進んでいると考えている。今後も申請書に記載した計画に沿って研究を進める。具体的には引き続き作成した被検菌を用いて機能未知の化合物に対する耐性株の作成とゲノムシークエンス解析を進める。計画段階ではRI標識化合物を用いた高分子合成阻害様式の検討も実施予定であったが,コスト面から優先順位を下げる事とした。lptD4213株の作成も成功しているので,ゲノムライブラリーの構築も進める。
すべて 2023 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
The Journal of Antibiotics
巻: 76 ページ: 691~698
10.1038/s41429-023-00656-5
https://www.bikaken.or.jp