研究課題/領域番号 |
23K06195
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研究機関 | 北海道科学大学 |
研究代表者 |
前田 伸司 北海道科学大学, 薬学部, 教授 (50250212)
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研究分担者 |
藤原 永年 帝塚山大学, 現代生活学部, 教授 (80326256)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 抗酸菌 / MAC / 血清型特異糖ペプチド脂質 |
研究実績の概要 |
日本国内では、非結核性抗酸菌感染症患者数が増加しており、その起因菌の8割以上がMycobacterium avium complex(MAC)である。抗酸菌の細胞壁は、脂質成分に富むことが特徴で、MAC菌はさらに細菌表層に血清型特異糖ペプチド脂質(glycopeptidolipid, GPL)を発現している。GPLは、感染時に宿主免疫システムと最初に接触する分子で、構造に依存して菌の病原性が異なり、免疫応答に直接関与する因子のひとつである。この分子に注目し、新規抗酸菌薬やワクチン開発につなげる研究を行う。GPL構造と免疫応答との相関を明らかにするために、①GPL構造と生合成遺伝子の同定、②GPL構造に依存した宿主免疫応答、特にToll様受容体への反応性について解析を行う。病原性に関連したGPL構造と生合成機構・免疫応答の解明により、GPL合成経路を標的とした抗菌薬やワクチンなどの開発が可能となる。 本年度の研究では、臨床分離株のMycobacterium intracellulare ku11株の新規GPL構造が、このGPL領域をプラスミドで血清型1型菌に導入することにより再現することができた。この結果に基づき、さらに、GPL合成酵素クラスター上の一部遺伝子を欠損させたプラスミドを構築して、血清型1型菌を形質転換し、発現したGPL構造を解析することで各遺伝子の機能の確認を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床分離株であるM. intracellulare ku11株が持つ新規GPL合成酵素クラスター領域のDNA断片(10-15 kbp)を抗酸菌の発現ベクターであるpVV16プラスミドに導入して、1型GPLを発現するNF113株を形質転換した。得られたコロニーのGPL構造を薄層クロマトグラフィー(TLC)で分析すると、糖鎖が6個結合したku11株のGPL構造が、NF113株由来の変異株で発現していることが確認できた。 そのため、CRISPR-Cas9法で各遺伝子破壊変異株を作製することと並行して、ku11株のGPL合成酵素クラスター上の一部遺伝子を欠損したプラスミドを構築し、NF113株を形質転換した。得られた変異株のGPL構造を分析し、各ORF機能の確認を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
ku11株が持つGPL合成酵素クラスター領域のDNA欠損変異株のGPL構造分析で、ku11株のGPL合成メカニズムを明らかにする。 2024年度は、当初の計画通り、GPL構造とトール様受容体(TLR)との反応性の関連を調べるためのレポータージーンアッセイのための細胞の準備と他の血清型のGPL発現変異株の作製を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度の研究において、変異株作製と分離に手間取り時間が必要だったために次年度使用となった。2024年度は、昨年できなかった方法での結果の確認とレポーターアッセイのための細胞培養の準備及び変異株作製に使用予定である。
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