研究課題/領域番号 |
23K06204
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
窪田 香織 福岡大学, 薬学部, 講師 (60380557)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | Aβ / ミトコンドリア障害 / ロテノン |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病やパーキンソン病、うつ病、自閉症スペクトラム障害、多発性硬化症など多くの神経疾患の発症・進展には、神経細胞のエネルギー代謝が深く関与しており、エネルギー産生の場であるミトコンドリアの機能不全がすべての疾患の基盤にあると考えられている。アルツハイマー病では、原因物質のAβが蓄積することにより、ミトコンドリアの膜電位の低下、ミトコンドリアの量・局在の異常や活性酸素量の変化が生じることが考えられている。 そこで本研究初年度は、オータプス培養標本にAβやミトコンドリア障害誘導薬ロテノンを処置してミトコンドリア機能障害を誘導し、ミトコンドリア機能を解析するためのモデル細胞系の構築を行った。まず、初代培養アストロサイトを島状に区画培養し、1週間後ニューロンを共培養することにより、単一のニューロンを区画内に培養した。この標本に各濃度のAβやロテノンを処置することによりミトコンドリア障害を誘導した。ニューロン形態変化(軸索や樹状突起)に対する神経障害の影響を免疫染色法により解析し、Sholl analysis 法によって樹状突起と軸索の伸展を解析した。その結果、神経障害モデルとしての薬物処置条件やモデルの形態の特徴を決定した。さらに、ミトコンドリア機能が障害を受けると、ミトコンドリア膜電位は低下する。ミトコンドリア膜電位評価用蛍光色素(JC-1など)を用いてミトコンドリア膜電位を測定し、Aβやロテノン処置によりミトコンドリア障害が生じたことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究初年度は、オータプス培養標本を用いたAβ誘導ミトコンドリア障害モデル細胞系とロテノン誘導ミトコンドリア障害モデル細胞系の構築を目的に、形態学的解析を実施し、 ミトコンドリア障害神経モデルとしての妥当性を検討した。障害誘導時のニューロン形態変化(軸索や樹状突起)に対する神経障害の影響を免疫染色法により解析した。Sholl analysis 法によって樹状突起と軸索の伸展を解析したところ、いずれのモデルも神経障害を呈した。さらに、ミトコンドリア膜電位評価用蛍光色素(JC-1など)を用いてミトコンドリア膜電位を測定し、Aβやロテノン処置によりミトコンドリア障害が生じたことを確認したが、検出機器の納入や実験系の構築に時間がかかり、現在解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究初年度は、オータプス培養標本を用いたAβ誘導ミトコンドリア障害モデル細胞系とロテノン誘導ミトコンドリア障害モデル細胞系の構築を実施し、神経モデルとしての妥当性を検討したところ、神経障害を確認できた。本年度は、昨年度に引き続きミトコンドリア膜電位の評価や、ミトコンドリアの量・局在の解析を進め、Aβ処置やロテノン処置によるミトコンドリア障害の確認する。さらに障害モデルの酸化ストレス・マイトファジー関連因子の解析も併せて進める。 以上の方法でモデル細胞系の構築を完成させたのち、このミトコンドリア障害神経モデルを用いて漢方薬の有効性の確認を行う。初めに細胞障害に対して形態学的に改善効果を示す人参養栄湯・加味帰脾湯など候補漢方薬や生薬の探索を実施する。ミトコンドリア膜電位、量・局在の変化、酸化ストレスやマイトファジーに対する候補漢方薬の改善効果の検討も併せて進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に検討を予定していたミトコンドリア膜電位評価用蛍光色素を用いたミトコンドリア障害の検出実験が、検出機器の納入や実験系の構築に時間がかかり、現在解析中である。よってこの実験に供する予定の試薬の購入費等が2年度に繰り下げとなったため。2年目は引き続き膜電位測定実験を早期に終了させ、当初の2年目の計画の実験に取り掛かる予定である。
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