研究課題/領域番号 |
23K06222
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研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
張 音実 明治薬科大学, 薬学部, 特任研究員 (50573466)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | マイクロバイオーム / 増悪因子 / 増悪微生物 |
研究実績の概要 |
尋常性乾癬は掻痒を伴う自己免疫疾患である。遺伝的要因及び環境的要因がトリガーとなり、免疫系が活性化されることで、表皮角化細胞が健常者の10倍の速さで増殖し、銀白色の鱗屑が盛り上がり最終的に剥がれ落ちるという臨床的特徴を呈する。本疾患に対する治療法としては、IL-17受容体阻害薬を含む生物学的製剤が開発されており、特に重症患者に対して顕著な効果を示している。しかし、乾癬はその病態の多様性から、一部の患者が既存治療に対して非反応性を示す事例が存在する。患者と健常者の角化細胞環境の明らかな差異から、皮膚上のマイクロバイオームの構成も異なると推測される。このため、患者の皮膚マイクロバイオームがディスバイオーシスの状態にあると考えた。次世代シーケンサーを用いたハイスループットシーケンス解析を行い、さらにUniFrac距離分析、主成分分析、多様性解析から尋常性乾癬患者皮膚に顕著に存在するマイクロバイオームを見出した。これを暫定的にGammaproteobacteria sp1と命名した。一方で、Gammaproteobacteria sp1の相対占有率の上昇に伴いStaphylococcaceaeの占有率が低下したことから、患者皮膚はディスバイオーシスであることが判明した。現在、Gammaproteobacteria sp1 をノックダウンさせるためにStaphylococcaceaeとその他の関連菌種を用いて移植用カクテルの作製を進行している。また、次年度に予定しているGammaproteobacteria s sp1を選択的に溶菌させるためのファージを選別中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、乾癬患者における皮膚マイクロバイオームのディスバイオーシスを是正し、治療に資することを最終目的とする。本年度は、計画に沿ってディスバイオーシスの原因と推定される特定の細菌群を同定することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、ディスバイオーシスの原因となる細菌の炎症応答能およびその制御に焦点を当て、関連するファージの探索を進める。特に、ファージに関しては既に探索を開始しており、有望な候補を見出している。
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次年度使用額が生じた理由 |
炎症応答に関する細胞モデルの予備実験の一部を次年度に延期したが、研究計画の全体的な進行には影響を与えていない。
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