研究課題/領域番号 |
23K06241
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
伝田 香里 順天堂大学, 医学部, 特任助教 (00313122)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | アトピー性皮膚炎 / 炎症 / レクチン / 抗原提示細胞 |
研究実績の概要 |
ヒトのアトピー性皮膚炎組織を用いた先行研究により、皮膚の抗原提示細胞に発現するレクチンによる糖鎖認識は、アトピー性皮膚炎を悪化させるのか?それとも抑制するのか?との疑問が生じた。そこで、本研究では、ヒトマクロファージガラクトース型C型レクチンのマウスオーソログと考えられるMGL2に着目して、マウスアトピー性皮膚炎モデルを用い、MGL2がアトピー性皮膚炎の炎症応答に直接的に関与するのか、TARC/CCCL17に着目してメカニズムとともに明らかにすることを目的として研究を開始した。 2023年度は、ダニ抗原クリームの反復塗布によるヒトアトピー性皮膚炎の病理学的所見を再現できるマウスモデルの構築を試みた。マウスの背部および耳介部を毛刈り・除毛した後、1週間に2回の反復塗布を行い、皮膚症状のスコアリングを行った。その結果、6週間の観察期間において、C57BL/6マウスでは、いずれの個体でも大きなスコア上昇は確認できなかった。これに対して、Mgl2ノックアウトマウスでは、塗布3週後にスコアの上昇が認められる個体が観察された。また、スコアの上昇した個体では、塗布3週後の血清total IgE値の上昇も認められた。TARC/CCL17については、予備的検討の結果、塗布3週後よりも、6週後のほうが値が高いことが予想されたため、塗布6週後の血清TARC/CCL17値を測定したところ、ナイーブマウスに比べて上昇していたものの、高いレベルではなくスコアリングとの相関も認められなかった。 以上より、Mgl2ノックアウトマウスを用いることでダニ抗原クリームを用いたマウスアトピー性皮膚炎様モデルが作製できた。今後例数を増やす必要があるが、MGL2がアトピー性皮膚炎の炎症に抑制的に働く可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度の計画では、ダニ抗原クリームを用いたマウスアトピー性皮膚炎モデルにより野生型マウスに発症した皮膚炎組織を用いてMGL2発現細胞の挙動を組織学的に解析する予定であったが、野生型マウスではスコアの上昇が思ったほど認められなかった。このため、当初2024年度に計画していたMgl2ノックアウトマウスを用いた解析を前倒しして実施し、MGL2がアトピー性皮膚炎モデルの皮膚の炎症を抑制する可能性を明らかにした。このため、研究全体としては進展しているが、2023年度中に野生型マウスを用いて実施する予定であった組織学的な解析が十分に実施できておらず、全体としては、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
アトピー性皮膚炎を発症したマウスの皮膚の組織学的な解析を2023年度後半から開始しており、組織切片では野生型マウスにおいても表皮の肥厚が観察されたことから、野生型マウスにおいても症状は弱いがアトピー性皮膚炎の発症を確認できている。そこで、2024年度には野生型およびMgl2ノックアウトマウスの炎症皮膚を用いて、MGL2陽性細胞が炎症に伴ってどのような挙動をするのかなどを明らかにしていく予定である。また、すでにMGL2が炎症応答に関与する可能性が示されたため、MGL2が認識する抗原の存在が予想されるため、抗原あるいは炎症組織中において、MGL2のリガンドが存在するか明らかにすることで、メカニズムの解析も進めていく予定である。一方で、本モデルが、ヒトで観察されたTARC/CCL17とMGL2との関連の解析には適当でない可能性が示されたため、他のアトピー性皮膚炎モデルの構築も検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究全体としてはおおむね順調に進行しているが、組織学的な解析に遅れが生じたため次年度使用額が生じた。 2024年度についても、動物施設使用料、マウス購入費、組織学的解析や免疫学的解析のための消耗品購入等に使用する計画である。
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