研究課題/領域番号 |
23K06245
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研究機関 | 大阪医科薬科大学 |
研究代表者 |
門田 和紀 大阪医科薬科大学, 薬学部, 准教授 (50709516)
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研究分担者 |
Kamarainen Tero 大阪医科薬科大学, 薬学部, 特任研究員 (20909890)
戸塚 裕一 大阪医科薬科大学, 薬学部, 教授 (50312963)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 共結晶 / コアモルファス / 凍結噴霧乾燥法 / 形態解析 / ナノ粒子 / 吸入粉末合剤 |
研究実績の概要 |
本研究では、多様化する創薬モダリティに適用できるユニバーサルな製剤として、非侵襲的な投与形態の吸入粉末剤に着目し、各モダリティや薬剤に対して適切な部位へ到達率を向上させる技術基盤の構築を目指した。本年度は、水溶性高分子多糖類による階層的な気管支構造に合致した空気力学的粒子径を持つ中空粒子の作製を行った。特に、低分子化合物をモデルとして、湿式粉砕によりナノ粒子を作製し、このナノ粒子について、凍結噴霧乾燥法を利用して作製した中空粒子に分散させた。凍結噴霧法では、熱あるいは有機溶媒などを用いずに、瞬時に液体窒素で凍結させたのちに、凍結乾燥することからタンパク質や抗体などの吸入製剤設計に非常に有効的である。本検討においては、デキストランなどとナノ粒子を凍結噴霧させた粒子についての物性を評価した。さらに、その物性評価から多孔性となった粒子の形態を分担者であるTero氏の協力によって、変形挙動などについて形態解析を行った。 また、一方で噴霧乾燥法を利用した場合においては、吸入剤設計においては他成分の薬剤を肺に届けることが重要となる。そのため、シクロデキストリン金属有機構造体に着目し、噴霧乾燥させることで複数成分の薬剤を混合させることを目指した。その際、薬剤を安定的に維持させるため、複数の薬剤については共結晶あるいはコアモルファス化させて、同時に肺に送達させる技術の確立を行った。親水性薬物と疎水性薬物といった物性が異なる薬物を同時に同じ場所に送達させ、またその際の溶出挙動についても同調挙動をとることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請においては、水溶性高分子多糖類による階層的な気管支構造に合致した空気力学的粒子径を持つ中空粒子の作製、肺深部へ送達可能な新奇な構造を有した粒子設計およびin silico技術による粒子の肺内評価法技術という3つの技術基盤を利用して、多様化する創薬モダリティに対応した吸入粉末剤の設計プラットフォーム構築を提案するものである。その中で、これまで安全性を確保した糖を利用し凍結噴霧乾燥法によって、ナノ粒子化させた薬剤を分散させた製剤化に成功した。この製剤については、水への再分散性も良好であり、またその糖の種類によって粒子構造が異なることを、実験的な破壊測定およびその形態解析から明らかとした。凍結噴霧乾燥法によって、異なる粒子構造をもった粒子を作製することができる技術は、本研究での様々なモダリティの高分子や抗体にも適用可能であると思われる。また、Tero氏によるIn silico技術を用いた形態解析は、本研究の大きな課題であったが、ナノ粒子を分散させる際の破壊挙動から予測することが可能であった。一方、肺への送達において異なる物性の薬剤を同時に送達する技術は非常にむつかしいとされているが、我々はこれについて、薬物同士の共結晶化あるいはコアモルファス化に成功し、この技術によって複数の薬剤を肺に同時に送達させることに成功した。今回は低分子で実施したが、この技術については中分子への適用も期待できるため、次年度以降は他の対象化合物へも適用する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後については、低分子だけでなく実際に抗体・タンパク質・中分子などを利用して、階層的な空気力学的粒子径によって、その薬剤に対応した目的部位となる肺到達性を向上させた粒子設計を行う予定である。特に、今年度成功した凍結噴霧乾燥法を利用してナノ粒子を分散させる技術については、実際に分子量の大きい抗体やタンパク質などに適用させたい。一方で、中分子については肺への同時送達を実現させるために、分子複合体のスクリーニングを行う予定である。中分子についてはモデル化合物が少ないと思われるので、分子量が500以上のものをまずはターゲットとして取り組みたい。一方もう一つのin silico技術を使った肺内送達率予測については、これまでのモデルへ薬物の物性をあてはめ、特に複数成分の薬剤や高分子については、低分子の薬剤の挙動などと異なっているのかを検証したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度については、低分子化合物を対象としてたため当初予定していた試薬類などに比べると比較的低額であった。今後抗体や中分子などを使用するにあたり、前年度購入しなかったものについて購入する予定である。
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