研究課題/領域番号 |
23K06281
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
成田 勇樹 熊本大学, 病院, 助教 (40614665)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | CKD / 血栓塞栓症 / インドキシル硫酸 |
研究実績の概要 |
慢性腎臓病 (CKD) は、心血管疾患 (CVD) など様々な合併症を併発し、国民の健康寿命を損失させる。殊に、CVD の中でも心筋梗塞等の致死的な血栓塞栓症リスクを増加させるが、有効かつ安全な予防法は存在しない。本研究課題では、CKD 時の血栓塞栓症の介在因子としての硫酸抱合型尿毒素インドキシル硫酸の産生責任酵素 Sulfotransferase (Sult)1a1 の欠損動物を用い、IS の産生・蓄積阻害の活用がCKD患者における血栓塞栓症予防に真に有効であるのかを確認し、その作用機序を明らかにすることで、IS の産生・蓄積阻害を活用した CKD 患者における血栓塞栓症予防戦略の基盤確立を目的に、2023年度は以下の研究を実施した。 Sult1a1欠損マウス及びC57BL/6(対照)マウスを用い、0.2%のアデニン食を一定期間(4~8週間)摂餌させることでモデルを作成し、血中・腎組織中インドキシル硫酸濃度及び組織因子の変動、血栓形成について比較精査を行った。その結果、C57BL/6マウスでは、アデニン食の摂餌期間が長くなるにつれ血中・腎組織中インドキシル硫酸が蓄積し、それに伴い組織因子が著名に上昇することが認められた。また、酸化ストレス(HO-1)や炎症(IL-6, TNF-α)の上昇も認められた。対して、Sult1a1欠損マウスでは、血中・腎組織中インドキシル硫酸の蓄積は示されず、組織因子の上昇も認められなかった。一方で、抗フィブリン抗体を用いた免疫染色によるフィブリン形成を指標に血栓形成を評価したが、血中・腎組織中インドキシル硫酸の蓄積及び組織因子の顕著な上昇が認められたC57BL/6マウスにおいても血栓形成は示されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アデニン誘発 CKD モデルでは、血中・腎組織中インドキシル硫酸の蓄積に伴い、組織因子が上昇し、血栓形成が認められると想定して研究を実施した。血中・腎組織中インドキシル硫酸の蓄積、組織因子の上昇に関しては想定通りの結果が得られたものの、血栓形成は示されなかった。原因として、アデニン食の摂餌期間が短く、血栓形成に至らなかったこと、抗フィブリン抗体を用いた免疫染色によるフィブリン形成を指標に血栓形成を評価したが、腎障害を引き起こす2,8-ジヒドロキシアデニンの結晶が染まっており、フィブリン形成を適切に評価できていない可能性が示唆された。この点を鑑みて、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
腎障害による血栓形成もしくは血液凝固能の亢進を適切に評価する必要があるため、短期間で血栓形成や血液凝固能能亢進が報告されているリポポリサッカライド (LPS) 誘発 AKI モデルを用いて評価方法の検討を行う。LPSを投与し、24時間後に腎機能及び血中・腎組織中インドキシル硫酸濃度、組織因子の変動、血栓形成について評価を行う。血栓形成及び血液凝固能の亢進に関する評価方法としては、抗フィブリン抗体を用いた免疫染色によるフィブリン形成に加え、血中のD-dimerやTAT、更には尾部切断創の局所止血時間の測定等、複数の項目により評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画に遅れが生じ始めたため、わずかながら残額が生じた。研究計画に遅れが生じた内容を次年度に実施するため、残額は次年度にて使用する。
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