研究課題/領域番号 |
23K06284
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
福田 達也 和歌山県立医科大学, 薬学部, 講師 (90805160)
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研究分担者 |
岩尾 康範 和歌山県立医科大学, 薬学部, 教授 (30433022) [辞退]
池田 真由美 和歌山県立医科大学, 薬学部, 助教 (90965708)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 細胞外小胞 / エクソソーム / マイクロフルイダイザー / 高圧乳化処理 |
研究実績の概要 |
中枢疾患に対する高分子医薬開発においては、血液脳関門(BBB)の突破技術の開発が必須であり、その手段の一つとして細胞外小胞エクソソーム(EV)の応用が期待されている。本研究では、EVに対してMicrofluidizerを用いた高圧乳化処理を適用し、一製剤工程で簡便かつ効率的に脳血管標的化リガンドおよび核酸医薬をEVへ搭載可能な技術を開発するとともに、構築したEV製剤による患部選択的なBBB突破による核酸医薬送達と脳疾患治療を目的とする。 2023年度は、高圧乳化処理を用いたEV製剤の大量生産に向け、過去の報告に基づき牛乳由来EVの回収と物性評価を行い、粒子径約120 nm、ζ電位-30 mVのEVを安定的に得ることに成功し、細胞培養上清より超遠心にて回収する場合と比較して大量にEVを回収できることを確認した。EVを高圧乳化処理を繰り返すことによって粒子径が100-110 nmへ減少した一方、多分散指数やζ電位には顕著な変化がなかった。また、EVを蛍光標識DSPE-PEG2000とともに高圧乳化処理することで、PEG脂質修飾量の最適化を行い、EV 1 ugに対して修飾量がプラトーに達する値を見出し、本数値をもとに脳標的化リガンドの修飾とその機能性評価を現在進めている。高圧乳化処理によるEVへの薬物封入について、これまでに水溶性抗がん剤であるドキソルビシンの封入が可能であることを報告してきたが(Pharmaceuticals, 2023)、これに加え、疎水性のパクリタキセル(PTX)も、EVと混合するのみではほとんど封入できなかった一方で、高圧乳化処理により有意に高い効率で封入できることを明らかとした。このことから、高圧乳化処理条件を最適化することで、様々な薬物をEVへ封入できることが示唆され、核酸医薬の封入検討に向けた検討において有用な知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マイクロフルイダイザーを用いたEVへのPEG修飾脂質の修飾量の最適化および脳血管・脳腫瘍細胞標的化リガンドの修飾と機能性評価まで進められている。核酸医薬の封入検討は準備段階ではあるものの、EVと混合するのみでは効率的に封入することができなかった薬物を、高圧乳化処理を用いることで封入効率を向上できることを新たに見出すことができた。維持上により、マイクロフルイダイザーを用いたEV製剤開発に向けた有用な知見を見出すことができたと考えており、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
脳標的化リガンド修飾EVの機能性評価を進めるとともに、核酸医薬封入に関する検討を行う。そして、目的の製剤が開発でき次第、in vitroおよびin vivo試験に進み、その有用性を評価する予定である。 また、マイクロフルイダイザーを用いたEV製剤の大量生産に向けた検討も併せて進めていく。
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