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2023 年度 実施状況報告書

TRPチャネル活性制御機構の破綻によるP-糖タンパク質活性亢進機序の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23K06295
研究機関産業医科大学

研究代表者

岡田 亮  産業医科大学, 産業保健学部, 准教授 (70633105)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワードTRPC6 / P-糖タンパク質 / ポドサイト
研究実績の概要

本年度はP-gp活性亢進の分子メカニズムを明らかにする足掛かりを得た。
まず,ポドサイトにおけるP-gp遺伝子発現にTRPC6不活性化の破綻が及ぼす影響について検討した。すでに所属する研究グループで不活性化破綻につながる変異TRPC6を発現するマウスポドサイト細胞株 (TRPC6ΔCC) ,およびTRPC6欠損ポドサイト細胞株 (TRPC6 KO)を樹立している。野生型細胞株,TRPC6ΔCC,TRPC6 KOの3系統の細胞株についてRT-PCRを行い,マウスP-gp遺伝子 (Abcb1a) を特異的に検出した。Gapdh遺伝子を内部標準として相対的なAbcb1a遺伝子発現量を評価したところ,3系統の細胞株間で有意な差はみられず,TRPC6の不活性化破綻がAbcb1a遺伝子発現に大きな影響を及ぼしているとは言えなかった。
また,TRPC6の不活性化が破綻した細胞における遺伝子発現パターンに関して網羅的な情報を獲得するため,以上3系統の細胞株のRNA-seqを実施した。野生型細胞株において検出された19055遺伝子において,2083遺伝子が野生型細胞株と比較してTRPC6ΔCC株で発現量が増加し,TRPC6 KO株で低下していた。また,3162遺伝子では野生型細胞株と比較してTRPC6ΔCC株で発現量が低下し,TRPC6 KO株で増加していた。これらの2083遺伝子および3162遺伝子について焦点を当てて分析したところ,P-gp細胞内領域をリン酸化することで同分子の細胞表層への移行を促進するPim-1をコードする遺伝子のmRNA発現量がTRPC6ΔCC株で発現量が増加し,TRPC6 KO株で低下していた。
以上より,細胞表層への移行を制御するPim-1発現量の増加により細胞表層におけるP-gp発現量が増加し,P-gp活性が亢進している可能性が考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的であるステロイド抵抗性獲得の分子基盤解明の足掛かりとして,TRPC6不活性化が破綻したポドサイトにおいてP-gp遺伝子mRNA発現量に大きな変動はないものの,細胞表層への移行を制御するPim-1発現量の増加により細胞表層におけるP-gp発現量が増加し,P-gp活性が亢進している可能性を見出したことから,着実に研究を前進させることができたと考える。
一方,当初予定していた,FSGS患者より同定された変異を導入させた新規細胞株の樹立には至らなかったことから,当初の計画以上に順調に進行しているとは言えない。

今後の研究の推進方策

現在までの進捗状況の欄に記述した通り,本年度は当初予定していたFSGS患者より同定された変異を導入させた新規細胞株の樹立に至らなかった。したがって次年度は,FSGS関連変異型TRPC6を一過性に発現させた細胞を代替的に使用した解析を検討するなどの対応をとる。
また,本研究の目的としていたP-gp活性亢進の分子メカニズムを明らかにする重要な足掛かりを得たことから,キャピラリーベース全自動イムノアッセイ機器 (シンプルウエスタン) を駆使した細胞表層のP-gp発現量の評価など,見出された可能性の検証を引き続き継続する。

次年度使用額が生じた理由

研究計画にも挙げていた電気生理学的実験を行う際に必要となる機器 (マイクロマニュピレーター) が不具合を起こし, 急遽購入を検討することとなった。購入は手続きの都合上, 次年度となる。したがって, 購入金額を確保するため, 本年度使用予定であった予算の一部を次年度に繰越し, 次年度に使用する計画とした。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] Ca2+依存的不活性化機構の破綻につながる変異型TRPC6を内在的に発現するポドサイト細胞株におけるTRPC6チャネル活性変化2023

    • 著者名/発表者名
      岡田亮,小牧竜也,坂口怜子,木原隆典,森誠之
    • 学会等名
      第41回産業医科大学学会
  • [学会発表] Targeting the coiled-coil domain of TRPC6 channel with the CRISPR/Cas9 system in mouse-podocyte cell line2023

    • 著者名/発表者名
      Ryo Okada,Reiko Sakaguchi,Masayuki X. Mori
    • 学会等名
      第97回日本薬理学会年会

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公開日: 2024-12-25  

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