研究課題/領域番号 |
23K06306
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
荒木 伸一 香川大学, 医学部, 教授 (10202748)
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研究分担者 |
江上 洋平 香川大学, 医学部, 講師 (80432780)
川合 克久 香川大学, 医学部, 助教 (80534510)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ラメリポディア / アクチニン / 細胞移動 / ライブセルイメージング / 光電子相関顕微鏡 |
研究実績の概要 |
ラメリディポディア(葉状仮足)は細胞移動時に形成されるシート状の細胞突起で、がん細胞の浸潤・転移機構との関連においても重要な細胞構造である。ラメリディポディアの伸長は、Rac1、WAVE、Arp2/3複合体活性化により誘導される枝分かれしたアクチンフィラメントの網目構造形成によって起きるが、ラメリディポディアの動的形態変化にはさらに数多くのアクチン結合タンパク質が関与する。α-actinin-4(ACTN4)の発現は、がん細胞の浸潤能との相関性があり、がん悪性度を示すバイオマーカーとしての応用が考えられているが、ラメリポディアにおけるACTN4の役割はわかっていない。今回、我々は、上皮系細胞株BSC-1においてACTN4の細胞内局在、ACTN4過剰発現の影響、PI3Kによる局在化制御などについて、蛍光抗体法、蛍光ライブイメージング、光電子相関顕微鏡(CLEM)観察等の方法により解析した。ACTN4は、ストレスファイバー・接着斑及びラメリポディア先端部に多く見られた。ラメリポディア先端のACTN4はPI3K阻害によって消失し、ストレスファイバーの局在は影響を受けなかった。ACTN4過剰発現でこのラメリポディアは増加し、ライブセル解析ではACTN4に富むラメリポディアは非常に運動性が高いことが分かった。CLEM観察ではGFP-ACTN4に富むラメリポディアは、先端部に層状のヒダを持ち、普通の平坦なラメリポディアとは異なる形態を持つことがわかった。同様のラメリポディアは、浸潤性が高いがん細胞として知られるA549ヒト肺がん細胞、MDA-MB-231ヒト乳がん細胞でも見られた。ACTN4に富む先端層状型ラメリポディアは、PI3K依存性で、高い運動性示し、細胞の活発な移動・浸潤に関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BSC-1細胞のACTN4が局在するラメリポディアの特性解析についてほぼ計画通りに研究を進め、概ね想定していた結果が得られている。また、ヒト浸潤性がん細胞においても同様の結果が得られ、ACTN4の細胞移動・浸潤への積極的な関与が示唆される結果を得た。ヒトがん細胞ではACTN4ノックダウンの実験を行い、ラメリポディア先端の層状ヒダ形成のACTN4依存性を確認することもできた。これらの研究成果は日本解剖学会、日本顕微鏡学会で発表した。論文は投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究として、細胞移動/浸潤アッセイによるACTN4強陽性ラメリポディア所有細胞の細胞移動・浸潤能評価を推進したい。ACTN4強陽性層状ヒダを先端に持つラメリポディアは、がん細胞の積極的な側方浸潤(lateral invasion)に寄与することを示唆する結果を得た。これを立証するために野生型ACTN4及びN末欠損ACTN4の過剰発現、ACTN1過剰発現、ACTN4-RNA干渉ノックダウン細胞でメンブレンインサートを使ったCell Invasion Assayキット、ないしカバーグラス上の培養細胞をスクラッチしてはがした模擬的傷の部分に遊走、浸潤してくる細胞で傷の修復程度を測定するWound Healing Assayを用いて細胞の浸潤活性を定量評価する。Wound Healing Assayでは、浸潤をリードする細胞の形態をSEM観察することで層状ヒダを持つラメリポディアの細胞浸潤への寄与を明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
培養器具や血清など他の経費で購入した消耗品の備蓄があったため、物品費の未使用額は次年度(2024)に繰り越して使用する。論文の出版に関しては、現在投稿中であるため、オーサーチャージは未だ発生していない。これらの経費を2024年度に使用することで、より効率的に研究が伸展することが見込まれる。
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