現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウス正常脳の冠状断面を作成し、主に腹側被蓋野, 前帯状皮質, 前頭眼窩野, 水道周囲灰白質, 縫線核周囲, 小脳核周囲, 小脳皮質などの特定領域の主要なスルファチド分子種分布を解析した。m/z 806.54(セラミド構造: d18:1-C18:0), m/z 888.62 (d18:1-C24:1), m/z 890.63 (d18:1-C24:0), m/z 906.63 (d18:1-C24:0h) の4分子に着目すると、前頭眼窩野では、m/z 806.54> m/z 888.62 >m/z 890.63> m/z 906.63 の順に、小脳皮質ではm/z 890.63> m/z 888.62 > m/z 906.63 > m/z 806.54 の順に含有量に変化を示した。一方で、軸索の束となって貫通する領域水道周囲灰白質などは、分子種の量に差はなかった。これらの分子種の含有量の変化は、領域特異的なOL機能を示唆するものと考える。一方で、髄鞘形成に大きく影響を与えていると報告している母体免疫活性化(MIA)とsocial defeat stress の両方の影響をうけたマウスのスルファチド分子種の構成を正常脳と比較すると、分子種の構成は変化していないが、量的に減少する領域、増加する領域と領域特異性が顕著となった。OLの異なる空間的嗜好性や疾患に対する異なる応答性に何らかのヒントを与える結果がでていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は4分子の特定領域の局在、含有量に着目したが、さらに調査する分子種の種類を広げ、それぞれの脳領域のマップを作成することに着手する。また、髄鞘形成にダメージを起こしていると想定されるモデルマウス、【脳梗塞モデル】, 【母体免疫活性化(MIA)+social defeat stress マウス】, 【ジンピー突然変異マウス】,【シバラーマウスの疾患マウス】をターゲットにしたスルファチド分子種トレースを行い、オリゴデンドロサイトの空間的嗜好性や疾患に対する異なる応答性との関連性を検索する。常に均質な蒸着を可能とする卓上型マトリクス蒸着装置iMLayerを使い定量精度を大幅に向上させ、高感度かつ高解像度のスルファチド分子種ブレインマッピングを作成する。領域特異的OL母集団の形態学的解析へ続くデータ収集に専念する。
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