研究課題/領域番号 |
23K06324
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
曽 友深 順天堂大学, 医学部, 助教 (60576221)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ゴルジ体 / GPHR / PI4P / 酸性オルガネラ / 膜接触部位 |
研究実績の概要 |
細胞内にはゴルジ体やエンドソーム/リソソームなど、内腔を酸性に保持する「酸性オルガネラ」が存在する。内腔酸性化はオルガネラの形態や機能と相関しており、その破綻は様々な疾患の発症要因とされている。本研究課題では酸性オルガネラの一つ、ゴルジ体の酸性pHに着目し、ゴルジ体特異的なイオンチャネルGPHRの欠損細胞・組織をモデルとして、ゴルジ体酸性pH維持の生理的役割の解明に努める。 これまでの先行研究から、ゴルジ体では輸送小胞とは異なる選択的な脂質輸送が行われていることが知られている。この輸送にはゴルジ体膜上のPI4Pがリガンドとして働くが、PI4P代謝と内腔酸性環境との関連性は不明な点が多く残っている。そこで、本年度はゴルジ体の酸性環境とPI4P代謝の相関性について解析した。まずは、PI4Pをリガンドとして選択的脂質輸送が行われる小胞体-ゴルジ体膜接触部位(オルガネラコンタクトサイト、以下膜接触部位)のゴルジ体内腔酸性環境変化の影響を検討した。 膜接触部位に局在するOSBPとVAPAの抗体を用いたproximity ligation assay(PLA)から膜接触部位の数を定量的に解析する実験系を樹立した。続いて、酸性化阻害であるバフィロマイシンA1やNH4Clを処理した細胞ではPLAの結果から膜接触部位の数の減少が認められ、そして、GPHR欠損細胞でも膜接触部位の数の減少が認められた。加えて、GPHR欠損におけるPI4Pの量的変動をPI4PプローブであるGFP融合PHドメインとゴルジ体マーカーとの位置相関によって解析した。その結果、GPHR欠損細胞ではPI4Pプローブのゴルジ体局在が減少していた。これらの結果はゴルジ体酸性環境の異常によって膜接触部位及びPI4P代謝の減少を示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通りにPLAを用いた膜接触部位の解析およびPI4P代謝と酸性環境の相関性の解析を進めることが出来たため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はPLAをGPHR欠損マウス脳などの組織レベルに解析を対象に広げる。また、用いる細胞をGPHR欠損細胞だけなく、既にスクリーニングによって同定されたゴルジ体の構造に異常をもつがん細胞株を用いて解析する。 他方、PI4P代謝を担うキナーゼPI4K3BやSac1やSac2などのホスファターゼ群の細胞内変動を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
手配を進めていたsiRNAと抗体の到着が遅れたため。既に入手済みであり、研究遂行に支障はない。
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