研究課題/領域番号 |
23K06331
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
竹田 有加里 福井大学, 学術研究院医学系部門, 助教 (20582159)
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研究分担者 |
佐藤 さつき 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 助教 (70444221)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 脂肪滴 / 洞房結節機能不全 / Ca制御異常 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、心筋細胞に脂肪滴が蓄積するPLIN2マウスの洞房結節ミトコンドリア-筋小胞体(SR)-細胞膜Ca2+連関を解析し、脂肪滴蓄積が洞房結節機能異常を誘発するメカニズムを解明することである。R5年度は、PLIN2、野生型マウス(WT)及び PLIN2にホルモン感受性リパーゼ(HSL)を過剰発現させて脂肪滴を枯渇させたマウス(PLIN2/cHSL)の心電図を比較した。PLIN2 は洞房結節由来の不整脈を誘発し、WTに比べて心拍変動が増大していたが、PLIN2/cHSLのリズムはWTと同等であった。このことから、脂肪滴が洞房結節機能異常に関与することが明らかとなった。次ぎに、細胞内Ca2+動態の検討のため、単離洞房結節細胞にCalbryte 520 AMを負荷し、Ca2+トランジエント(CT) および自動能に関与するSRの局所的なCa2+放出“LCR”をWTとPLIN2-Tgで比較した。CTの振幅とCT cycle length (CL)に差はなかったが、PLIN2ではCT持続時間が短縮し、CLのばらつき(SD)が増大していた。LCRにおいては、振幅とサイズが減少しており、早期LCRの増加、後期LCRの減少が認められた。このことから、脂肪滴が細胞内Ca2+動態異常に関与することが明らかとなった。また、caffeine投与でCTを誘発してSR Ca2+含量をWTとPLIN2で比較した。PLIN2ではcaffeine誘発性CT の振幅および持続時間が減少しおり、脂肪滴がSR Ca2+制御異常に関与することが明らかとなった。またPLIN2では、WTに比べて、ミトコンドリアと細胞内のROSレベルが増加していた。これらのことから、洞房結節細胞内の脂肪滴過剰蓄積による洞房結節機能異常には、ROSの上昇およびSR Ca2+制御異常が関与していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脂肪滴蓄積が洞房結節機能異常を誘発するメカニズムを解明することを目的として、PLIN2、WT、PLIN2/cHSLのミトコンドリア-筋小胞体-細胞膜の機能連関および洞房結節機能を、個体レベル(心電図)および細胞レベル(Caイメージング、ROS計測)で行った。筋小胞体-細胞膜の機能連関を中心とした解析を行ったが、今後は、ミトコンドリアの寄与を検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
①ミトコンドリア-筋小胞体-細胞膜の構造連関の検討: 1)3群マウスから単離した洞房結節細胞にミトコンドリア(Mito Tracker)とSR(ER Tracker)に選択的な蛍光色素を負荷し、共焦点レーザー顕微鏡を用いて精緻な三次元立体イメージを構築する。2) マウス洞房結節細胞ではRyR-Cav1.3とRyR-NCXの共局在が認められている。同様の免疫蛍光法を用いて3群マウスで検討する。 ②ミトコンドリア-筋小胞体-細胞膜の機能連関の検討: Ca2+指示薬Calbryte520 AMを細胞内に負荷した3群マウスの単離洞房結節細胞において、1) ミトコンドリア蛍光染色TMREとCalbryte520 AMとの同時染色を行い、ミトコンドリアの空間分布に対するLCRの発生頻度やミトコンドリア膜電位とLCRとの機能的関連を高速高解像度CMOSカメラで撮影し、2次元解析する。2) ROSで活性化されるCaMKIIのエフェクターCav1.3について、機能変化を電気生理学的に解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和5年度に予定していた、ミトコンドリア-筋小胞体-細胞膜Ca連関におけるミトコンドリアの役割を検討するための実験を翌年度に実施することと変更したため、計上していた 実験用動物、細胞単離試薬、蛍光標識試薬購入のための予算を次年度使用額として改めて計上する。加えて、当初の予定通り、令和6年度の予算として、ミトコンドリア-筋小胞体-細胞膜の構造連関を検討するための実験用動物、細胞単離試薬、蛍光標識試薬、抗体等の購入のための予算を計上する。
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