研究課題/領域番号 |
23K06346
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
豊田 博紀 大阪大学, 大学院歯学研究科, 准教授 (00432451)
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研究分担者 |
古賀 浩平 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (50768455)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | TRPV1 / TRPA1 / TRPM8 / 島皮質 / カプサイシン / ワサビ / メントール / 神経回路 |
研究実績の概要 |
島皮質は味の受容において非常に重要な脳部位であるが、局所神経回路がどのように動作し、味の受容が行われているかについては未解明な点が多い。本研究では、島皮質ニューロンに発現しているTRP(Transient Receptor Potential)チャネルに着目し、TRPチャネルが島皮質局所神経回路の動作機構や味覚受容に果たす役割を検討することにより、島皮質における味覚情報処理の神経基盤を明らかにすることを目的とする。TRPチャネルの中で、TRPV1、TRPM8およびTRPA1は、味物質の受容(TRPV1:カプサイシン;TRPM8:メントール;TRPA1:わさび)に関わることが知られているため、本研究では、3つのTRPチャネルに着目して課題を遂行する。本年度は島皮質第II/III層の錐体細胞からホールセルパッチクランプ記録を行い、電圧固定下において、TRPV1、TRPA1およびTRPM8作動薬(TRPV1:カプサイシン;TRPA1:アリルイソチアネート;TRPM8:メントール)を灌流投与した時の自発性興奮性および抑制性シナプス後電流に対する影響を検討した。その結果、TRPV1、TRPA1およびTRPM8作動薬は、自発性興奮性および抑制性シナプス後電流の頻度や振幅に影響を及ぼさなかった。しかし、TRPV1およびTRPA1作動薬が内向き電流を発生させることを見出した。一方、TRPM8作動薬により、内向き電流の発生は認められなかった。また、TRPV1およびTRPA1作動薬により生じる内向き電流は、TRPチャネルの拮抗薬であるルテニウムレッドにより抑制されることを確認した。これらの結果から、島皮質第II/III層の錐体細胞が、TRPV1およびTRPA1チャネルの活性化により興奮する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、TRPV1、TRPA1およびTRPM8作動薬を灌流投与した時の自発性興奮性および抑制性シナプス後電流に対する影響を検討した。TRPV1およびTRPA1作動薬は、自発性興奮性および抑制性シナプス後電流に影響を与えなかったが、内向き電流を発生させることから、島皮質においてはTRPV1およびTRPA1チャネルが情報処理において重要な役割を果たしているものと考えられる。このように、TRPV1およびTRPA1が情報処理に関与する可能性を確認することができたことから、本研究課題はおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、電圧固定下での記録により、島皮質第II/III層の錐体細胞がTRPV1およびTRPA1チャネルの活性化により興奮する可能性を示唆する所見を得ている。しかし、TRPV1およびTRPA1チャネルの活性化が、静止膜電位や活動電位に与える影響は不明である。このため、電流固定下において記録を行い、静止膜電位や活動電位に与える影響を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
想定していた消耗品が少なく済んだことが挙げられる。使用計画には、ホールセルパッチクランプ記録や組織化学実験を行うための試薬の費用、実験動物の経費、国外・国内旅費および論文印刷費が含まれる。
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