研究課題/領域番号 |
23K06424
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
新野 大介 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 教授 (20426563)
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研究分担者 |
大原 浩貴 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 講師 (10609225)
鈴木 律朗 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 教授 (20280810)
矢野 浩夢 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (60970457)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 骨髄腫 / 脂質代謝 / 細胞内脂質空胞 |
研究実績の概要 |
骨髄腫は、形質細胞が腫瘍化し主に骨髄内で骨髄腫細胞が増殖する造血器腫瘍であるが、未だに治癒は極めて困難であり、新たな治療薬の開発が待ち望まれている。リンパ腫のスメア細胞像において観察される細胞内脂質空胞では、空胞内には脂肪のみならずコレステロールが多く含まれ、コレステロールが細胞の増殖に強く関与することを見出し、DLBCLにおいては空胞が観察されたグループは予後不良であった。また、新規のコレステロール代謝経路阻害剤がリンパ腫細胞の小胞体ストレスを誘導し、アポトーシスを誘導することも明らかにした。本研究では骨髄腫の骨髄スメア標本を用いて細胞内脂質空胞の有無がどのように影響するのかを解析する。 1)ヒトスメア検体を用いた研究;骨髄腫患者のスメア検体を観察し、「細胞内脂質空胞」の有無で2グループ(有り・無し)あるいは3グループ(多い、少ない、無し)に患者群を分け、後方的観察により臨床病理学的因子などとの関連性を検討する。 2)骨髄腫細胞株(RPMI8226, IM-9, KHM-1B, KMS-12-BM)を用いた研究:これらの細胞株を用いて、コレステロール抜き培地と通常の培地で培養実験を行い、コレステロールの細胞増殖における重要性を検討する。また、細胞内の脂質の蓄積を透過型電子顕微鏡で形態観察、および薄層クロマトグラフィーで成分分析を行う。SR-BI阻害剤(BLT-1, Merck社)により、細胞のアポトーシスが誘導されるのかどうかを検討する。Cleaved Caspase-3の発現とともに、小胞体ストレスに関与するeIF-2α, ATF4,ATF6, CHOP, IRE1などの発現もWestern blot法や細胞染色法により解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在まで、1)ヒトスメア検体を用いた研究を進めてきた。島根大学医学部血液内科の骨髄腫患者の臨床データと骨髄生検または穿刺標本のデータを収集してきた。データの解析を行っているが、もう少し症例を追加して行きたいと思っている。加えて骨髄腫患者のスメア検体を観察し、「細胞内脂質空胞」の有無で2グループ(有り・無し)あるいは3グループ(多い、少ない、無し)に患者群を分ける解析を行ってきた。 2)骨髄腫細胞株(RPMI8226, IM-9, KHM-1B, KMS-12-BM)を用いた研究に関しては、熊本大学細胞病理学講座と定期的にカンファレンスを行い、細胞株の購入と免疫組織化学、Western blot法、細胞染色法の準備を行ってきた。 初年度は研究体制の整備に時間を費やしてしまい、予定よりやや遅れている結果になってしまったが、現在、島根大学血液内科、熊本大学細胞病理学講座との研究体制が整いつつあるので、今後細胞株実験、動物実験が予定通り進められると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
1)ヒトスメア検体を用いた研究では、島根大学医学部血液内科での骨髄腫症例を増やし、骨髄腫患者のスメア検体を観察し、「細胞内脂質空胞」の有無で2グループ(有り・無し)あるいは3グループ(多い、少ない、無し)に患者群を分ける解析を速やかに進めていきたい。 2)骨髄腫細胞株(RPMI8226, IM-9, KHM-1B, KMS-12-BM)を用いた研究では、熊本大学細胞病理学講座と共同で、細胞株購入と免疫組織化学、Western blot法、細胞染色法の準備を速やかに行い、研究を進めていきたい。 3)動物実験と4)新たなSR-BI阻害剤の探索は1)、2)が終了後に行う予定であるが、文献検索や実験プロトコール作成を進めていきたい。 5)「細胞内脂質空胞」の急性骨髄性白血病での観察は、再来年以降に行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内学会の旅費を計上していたが、学会参加の機会が少なかったため、50000円差額が出てしまった。
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