研究実績の概要 |
学内での倫理審査終了後に,クリニカルシークエンス(OncoGuide NCCオンコパネルシステム,FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル)が施行され,遺伝子パネル検査の情報が得られている悪性腫瘍症例から,ドライバー変異が,ナンセンス変異,あるいは終止コドンが出現するフレームシフト変異であると判断される症例群,すなわち,mRNA分解機構が活性化されていると推定される症例を5例抽出した(TP53 R209fs*6, TP53 R342*, PTEN Q245*, TP53 Q331*およびCDH1 N613fs*19, BAP1 W52*)。十分量の腫瘍組織と非腫瘍組織が含まれていることをHE標本で確認した後に,mRNA分解機構関連蛋白である eRF1, eRF3, Upf1, リン酸化Upf1(ser 1107およびser 1127の2種類), Upf2, Upf3, SMG1のホルマリン固定パラフィン包埋検体での,免疫染色の条件設定を行った。基本的には,抗体希釈濃度(最終的には1~2μg/MLに収束した),抗原賦活条件(クエン酸バッファーあるいはEDTAバッファーあるいは賦活なし)の組み合わせでの至適条件を探った。全てのマーカーにおいて適切と思われる条件設定が可能であった。このうち,eRF1, Upf1, リン酸化Upf1(ser 1107およびser 1127の2種類), Upf2, Upf3, SMG1は,腫瘍細胞での陽性所見は確認できたものの,腫瘍細胞と非腫瘍細胞との発現にほとんど差がないか,比較的小さな差に留まるものであった。一方で,eRF3発現は,癌細胞と周囲の非腫瘍組織では差が大きいものであった。eRF3がmRNA分解機構の活性化マーカーとしてもっとも興味が持たれる。
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