研究課題/領域番号 |
23K06432
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
長尾 俊孝 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (90276709)
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研究分担者 |
多田 雄一郎 国際医療福祉大学, 医学部, 准教授 (70292430)
平井 秀明 東京医科大学, 医学部, 助教 (00770744)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 唾液線導管癌 / SDC / HER2 / トラスツズマブ / Tmab / 治療効果予測因子 |
研究実績の概要 |
当該年度では唾液腺導管癌(SDC)におけるHER2の機能解析を主に行った。 HER2陽性局所進行・再発転移SDCに対してはトラスツマブ+ドセタキセル(Tmab+DTX)療法が施行されるが、治療抵抗性を示す症例が存在している。今回我々は、種々の臨床病理学的因子が、HER2陽性SDCに対するTmab+DTX療法の治療効果に与える影響を検討した。 国際医療福祉大学三田病院でTmab+DTX療法が行われたHER2陽性SDC症例100例を対象とした。HER2増幅はDISH/FISH法、腫瘍内不均一性はIHC・DISH法で解析した。 HER2コピー数はDISH法で12.6±4.20、FISH法で10.6±5.55、またHER2/CEP17比はDISH法で7.76±2.84、FISH法で5.32±2.73であり、これら2つの解析方法による値は有意に相関していた。さらに、HER2腫瘍内不均一性は100例中13例(13%)に認められた。HRAS及びBRAFに変異を有する症例はなく、PIK3CA変異は2例、PTENホモ欠損は6例であった。HER2コピー数、HER2/CEP17比、HER2腫瘍内不均一性、PI3K/AKT/mTOR経路に関連する蛋白/遺伝子の異常、TIL、CD8陽性細胞割合のいずれもが奏効率やPFSとの有意な関連性はなかった。一方、タキサン系薬の治療歴を有する群は有意にPFSが短く、DTXの相対用量強度が0.7未満の群でも有意に奏効率が低かった。 HER2陽性SDCにおいて、今回検討した分子病理学的因子とTmab+DTX療法の治療成績との関連は明らかでなかった。しかし、臨床的因子の解析から、本治療法の効果を向上させるには、投与時期やDTX投与量を適切に考慮する必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載した研究内容の約1/3程度を実施し、これらの成果を国際誌に投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は唾液線導管癌のp53遺伝子変異に着目し引き続き解析を行う方針であり、その成果を順次、国際誌に英語論文として報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定よりも物品の費用を抑えることができたため、次年度使用額が生じた。令和6年度は、この次年度使用額を、主に免疫組織化学染色や遺伝子解析に用いる消耗品の購入に充てる予定である。
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