研究課題/領域番号 |
23K06439
|
研究機関 | 公益財団法人放射線影響研究所 |
研究代表者 |
吉田 稚明 公益財団法人放射線影響研究所, 広島臨床研究部, 副主任研究員 (20832926)
|
研究分担者 |
大島 孝一 久留米大学, 医学部, 教授 (50203766)
濱崎 幹也 公益財団法人放射線影響研究所, 分子生物科学部, 副主任研究員 (80443597)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
キーワード | 造血器腫瘍 / 放射線被ばく / ゲノム異常 |
研究実績の概要 |
放射線被曝による白血病発症のリスク増加はよく知られている。しかし、その発症に関与する分子機構については十分解明されておらず、どのようにして放射線被曝後に白血病が発症するのかという点は不明なままである。本研究では、放射線被曝の影響が特に大きかった1980年以前に被爆者に発症した白血病に対し、現在の技術を用いて病理学的解析とゲノム解析を実施する。またマウスモデルを用いて白血病発症に至るまでの過程を評価する予定である。これらの結果を組み合わせ、放射線被曝による白血病発症機構の過程を理解し、今後の放射線被ばく医療への展開を試みる。当該年度は、被爆者に発症した白血病に対する研究を行った。試行調査として、慢性骨髄性白血病(CML)に着目した。CMLは被爆直後にリスクが増加した血液腫瘍の一つであり、また現在BCR::ABL1という特徴的な融合遺伝子がその診断に必要である。これまで通常の分子解析は実施できていたが、効率よく網羅的に遺伝子異常などを評価するために、次世代シークエンサーを用いた解析を行うこととした。そして、シークエンスライブラリーの作製を試みた。採取したDNAおよびRNAは断片化が進んでいたが、テンプレート量を増加させるなどの作業により目的のサイズのライブラリー調製ができた。また、次世代シークエンサーを用いた解析をするにあたりサンプル利用に関する所内での指針作成に関与した。これらのことにより、次年度はより研究を進めることができると考える。 また、放射線被ばく影響をより評価するため、被爆者での多発性骨髄腫発症リスクについての解析を実施した。本研究からは、血液腫瘍の診断基準は経時的に変遷していることもあり、その点を解決することが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
想定以上にDNA、RNAの断片化が進んでいるため、その対応が必要となった。また、研究を実施するにあたり、サンプル利用に関する指針を作成することが必要となり、その調整に時間を要した。
|
今後の研究の推進方策 |
作製したシークエンスライブラリーを用いて、遺伝子異常の有無を評価する。これにより、次世代シークエンサーによる解析が可能かどうかを評価する。また、臨床情報のまとめを実施し、病理学的解析を今後進める予定としている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
シークエンス解析を実施する予定であったが、ライブラリー調製に時間を要した。このため次年度使用額が生じた。2024年度にシークエンス解析を実施する予定としている。
|