研究課題
本研究の目的である、「膵管癌患者におけるEUS-FNA検体における術前化学療法(NAC)効果の予測と切除後検体における治療効果判定の標準化および予後予測マーカーの抽出及び検証」に則り、NAC関連検索や分子サブタイピングの過程でリスト化された膵管癌における分子異常から、様々な観点から候補分子を絞り、まず切除後検体における治療効果判定の標準化および予後予測マーカーとしての有用性を調べようとしている。膵管癌EUS-FNAB検体および膵管癌手術切除検体の検索とデータベース化を進め、その中で、今後の術前治療後症例との比較も想定し、まず術前治療未施行膵癌切除症例(46例)の臨床病理学的検討を行った。その結果,腺管形成を示さない充実成分が5%を超える症例は,予後不良である傾向が示された。また,症例によって癌周囲限局性膵萎縮の様相が異なっており,膵管周囲の微小環境が初期浸潤に関連している可能性が示唆された。これらは、今後行う術前治療施行症例の検討において、そのベースとなる結果と考えている。一方、膵癌組織からのEUS-FNA検体は、がんゲノム医療で解析に供されることが多くなっており、そのため本研究に供することができる組織検体は非常に少なく、今後の研究遂行に障害になる可能性がある。そこで保存検体の無駄な組織ロスを防ぎ微量検体での分子発現のより客観的で安定した判定・評価を得るために、組織透明化技術を併用した効率的な3D評価法の確立を目指した取り組みも並行して行っている。その際、生検検体の擬似検体(切除検体の組織ブロックから穿刺吸引して作製したもの)を用いた検討を行い昨年論文(Pancreatology. 2023;23(5):537-542)発表を行った。今後、この方法(プロトコール)を用いて、より多くの検体に適用可能かを手術検体・標本での検討と同時並行して行っていく。
3: やや遅れている
国内では膵癌に対して術前に化学療法を行ってから外科切除されるという流れができてから、あまり時間が経っておらず、若干、予想より検討症例数が少なくなってしまいそうなことから、術前治療未施行膵癌切除症例の検討を先行させた。また、がんゲノム医療用に供される検体が増加しており、これも検体数の確保が難しい面が出てきた。このため将来的に検体をロスせず評価できる方法としての組織透明化による3D評価の検討、プロトコール作成も先行させて行ってきた。このため、必ずしも申請書に記載した研究計画通りには進んでいないが、いずれも検討マーカーの絞り込みやそのマーカーでの検討を行う前の基盤作りとして重要とも言え、今後、研究目的の達成に向けてそれぞれの事項を進めていきたい。
本研究に供することができる検討症例全体(EUS-FNA、治療後膵切除検体、術前治療未施行膵癌切除検体)セットを早めに確定させること。そして症例レビューおよびキースライドのWSI化、未染色標本の作製、マーカーのパイロット的検討を加速させて行いたい。
研究進捗報告にも書いたように、症例や検体の調整、検討順序に変更が生じ、マーカー(特に抗体)などの検討を次年度に延期したため余剰が生まれた。次年度は、予定通り、評価マーカーなどの購入に充てさせてもらいたいと考えている。
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