研究課題/領域番号 |
23K06455
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
塩竈 和也 藤田医科大学, 医療科学部, 教授 (10387699)
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研究分担者 |
塚本 徹哉 藤田医科大学, 医学部, 教授 (00236861)
平山 将也 藤田医科大学, 医療科学部, 助手 (50875739)
荒川 敏 藤田医科大学, 医学部, 講師 (80449462)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 好中球細胞外トラップ / NETs / 腫瘍微小環境 / TME / 免疫組織化学染色 / ホルマリン固定パラフィン切片 |
研究実績の概要 |
われわれは、これまで各種疾患における好中球細胞外トラップ(Neutrophil Extracellular Traps: NETs)の関与について研究を進めてきた。今回、腫瘍微小環境(Tumor Microenvironment: TME)における好中球に着目して、好中球の中でもNETsががんの発育・進展に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。臨床検体の使用に際して、「医学研究倫理審査委員会」へ研究申請書を提出して評価者の客観的な審査を受けた。本学大学病院に保管されているホルマリン固定パラフィンブロックのうち、炎症性発がんとして、炎症症例は炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎およびクローン病)、がん症例は大腸癌を対象とした。免疫組織化学染色について、NETsの核成分はクロマチン脱凝集タンパクであるシトルリン化histone H3(cit-H3)、細胞質成分はmyeloperoxidase(MPO)、neutrophil elastase(NE)およびlactoferrin(LF)を用いてNETsを証明した。炎症性腸疾患全例でNETsが確認され、粘膜欠損部位に多く発現していた。大腸癌では約半数でNETsが認められ、癌先進部に多く分布していた。炎症性腸疾患および大腸癌では、典型的な線維状ではなく、いずれも類円形や紡錘形の形状を呈するNETsが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに得られた結果は以下の3点である。①炎症性腸疾患におけるNETs発現は、全例(7/7例)で陽性を示した。とくに粘膜が欠損した好中球集簇部位に多くNETsが発現していた。②大腸癌では14/32例でNETsが確認された。NETsは大腸癌の癌先進部に多く分布しており、類円形や紡錘形のNETsが散在性に確認された。③炎症性腸疾患および大腸癌では、いずれも類円形や紡錘形の形状を呈するNETsが発現しており、典型的な線維状の構造物以外でも陽性を示した。
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今後の研究の推進方策 |
炎症性腸疾患および大腸癌におけるそれぞれのNETs発現を確認することはできた。今後は、炎症症例とがん症例の両者のNETs発現を比較して、NETsとがんの進展メカニズムを追求する。さらに、臨床データでもとくにステージ、化学療法の有無、生存期間、転移の有無に焦点を当てて、臨床データとNETs発現の関連性を導き出す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は基盤作りの研究に尽力したため、予想以上に予算を消化しなかった。次年度以降は、網羅的な病理解析を主軸に展開するため、その方面で費用がかさむと予測される、本費用はおもに消耗品にあてて研究を充実させる。
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