研究課題/領域番号 |
23K06458
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
阿部 浩幸 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (40708632)
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研究分担者 |
黒瀬 優介 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任講師 (20832512)
原田 達也 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (60345113)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 胃癌 / 大腸癌 / 人工知能 / 病理診断 |
研究実績の概要 |
本年は下記の成果を得た。 (a) 大腸癌におけるリンパ節転移検出モデルの作成:大腸の粘膜下層浸潤癌(pT1b癌)の内視鏡的または外科的切除症例319症例(うち転移あり症例51例)を対象にwhole slide image (WSI)を作成した。WSIから弱拡大及び強拡大の画像を切り出し、畳み込みニューラルネットワークを用いて病理組織像からリンパ節転移の有無を予測するAIを作成した。その結果、ROC曲線のAUC値が0.93±0.07となり、既報告と比較し良好なモデルを作製することができた。Grad-CAM法等の複数の手法で、AIモデルが判定の根拠とした部位の可視化も試みた。 (b) Tissue microarrayを用いた網羅的な分子異常及び予後予測モデル構築:2015年から2021年に東大病院で切除された胃癌症例(約650例)を対象にtissue microarrayを作成し、HE染色と胃癌治療標的バイオマーカー(CLDN18, FGFR2b, HER2, PD-L1等)の免疫染色を行った。免疫染色の評価は80%程度が終了し、AI解析を行うためのデータ整備が整いつつある。 (c) 大腸癌肝転移の病理組織解析AI開発:術前化学療法を受けていない大腸癌肝転移症例130例のWSIを作成し、腫瘍部分のアノテーションを行った。予後良好群と予後不良群に分け、WSIから切り出したパッチ画像を学習データとし、multiple instance learningによるAIモデル作成を試みた。切り出すパッチのサイズや切り出す部位(腫瘍全体から万遍なく切り出すか、histological growth patternを反映する腫瘍辺縁部から切り出すか)等を検討したが、AIによる予後の推定は困難であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各研究課題について画像データの収集とアノテーション、AI学習の元となるデータベース(免疫組織学的評価等)が予定通り順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度(研究計画2年目)以降は以下の計画を進めている。 ・大腸癌リンパ節転移予測AIモデルについては、従来の臨床病理学的なリンパ節転移予測因子(リンパ節転移・簇出等)との予測精度の比較を行うとともに、AIが判定の根拠とした部位の組織学的特徴について検討を行う。 ・胃癌のバイオマーカー発現評価、HE染色の腫瘍部アノテーションを令和6年度前半に完成させ、HE染色病理組織像からのバイオマーカー発現予測モデルの構築に着手する。 大腸癌肝転移の予後予測モデルの作成は、令和5年度の検討では困難であった。学習データ症例数が少ないこと、肝転移症例のみが集められ患者集団の予後が全体に不良であること、肝転移の組織像が原発と比べ多様性を欠くことなどが原因として考えられる。症例数の増加や、予後以外の因子(遺伝子・免疫組織学的異常等)の推定を行うAIモデルの作成を検討する。なお大腸癌の簇出を評価するAIモデルについては令和5年度は未着手であり、令和6年度以降に検討を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
胃癌tissue microarrayの免疫染色について、一部を次年度に実施することになったこと、遠隔地での学会発表が当初予定より少なく、旅費が予定額より少なく済んだことが原因である。次年度は未施行の免疫染色を行い、また学会発表も複数予定している。当初計画通り予算を執行する予定である。
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