研究課題
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は肝硬変や肝癌に進行することがあるが、その発症機構は不明で治療薬もない。肝臓特異的HNF4α欠損マウス(KOマウス)は、アジア人に多い痩せ型のNASHを発症する。一方、HNF4αと核内受容体PPARαを欠損させたダブル欠損マウスではNASHが改善する。従って、今まで注目されてなかった痩せ型NASH発症にはHNF4αの発現低下とPPARαの活性化が関与することが示唆された。本研究では、HNF4αの下流経路の同定とPPARαの活性化機構を解明することにより、痩せ型NASHの発症機序の解明を目指す。HNF4αの標的遺伝子であるmiR-194-2pとmiR-194-5pの標的遺伝子を同定するためにRNAseq、RIPアッセイ、レポーターアッセイを行った結果、miR-194-2pについては9種類、miR-194-5pについては8種類を同定し、その多くが細胞の悪性化に関与する遺伝子であった。これらの遺伝子の多くはKOマウス肝臓で発現上昇しており、データベース解析によりヒト肝がんで発現が上昇傾向にあるものが多かった。このため、HNF4αはmiR-194-2pとmiR-194-5pの発現を誘導することにより、肝細胞が悪性化することを抑制することが示唆された。また、KOマウス肝臓におけるPPARαの活性化には細胞内のオレイン酸が関与しており、活性化されたPPARαがFATP1やCD36の発現誘導することがが分かったが、オレイン酸にPPARαの活性化への寄与は大きくないことが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
HNF4αの標的遺伝子であるmiR-194-2pとmiR-194-5pの標的遺伝子を同定できたこと、さらにはPPARαの活性化機構の一部が同定できたため。
同定したmiR-192-5pとmiR-194-5pの標的遺伝子のNASH発症への関与の分子機構を解析する。また、オレイン酸によるPPARαの活性化への寄与が部分的であったため、その他のPPARαの活性化機構を解析する。
令和5年度について、当初計画よりもより計画的かつ効率的に試薬等を購入した。このため、当初計画で計上していた物品費を削減することができたために未使用額が生じた。
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10.1093/jb/mvad005.
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