研究実績の概要 |
当初の研究計画に従ってCX43のノックアウト(KO)によって細胞内の量が変化する低分子量の分子を探索した。検討した分子(ATP, glucose, lactate)の内、ATPとglucoseがCX43KO細胞内で減少していることを見出した。このことから、CX43の発現濃霧によってATPやglucoseの量に差ができることで細胞競合が起こるか否かが決定されているものと考えた。そこで、HaCaT細胞と癌細胞の三次元共培養系において、ATPとglucoseを外部から供給してやることで細胞競合に変化が出るかどうかを検討したところ、本来HaCaT細胞に押し出されないはずのCX43KO細胞が低濃度(10μM)のATP処理によって押し出されるようになることが明らかになった。一方で高濃度(100μM)のATPで処理するとまたCX43KO細胞が押し出されなくなった。このことから、正常細胞と癌細胞の細胞競合ではATP濃度に依存して複雑なシグナルの制御がなされているものと考えられた。そのため、低濃度および高濃度のATPで刺激した際に細胞内のシグナルにどう影響が出るのかを検討したところ、WT, CX43KO共に癌細胞では濃度に関係なくATP刺激によって細胞内のAKTの活性化が見られるが、HaCaT細胞では高濃度のATP刺激によってのみAKTの活性化が観察された。このことは、低濃度のATP刺激ではWT, CX43KO共に正常細胞との間にAKTの活性に差が出るが、高濃度のATP刺激ではその差が失われることを示しており、このAKT活性の差の有無が細胞競合の有無につながるのではないかと考えている。
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