研究課題/領域番号 |
23K06501
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
波多野 良 順天堂大学, 大学院医学研究科, 特任准教授 (30638789)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | IL-26 / 慢性炎症 / 好中球 / 線維化 / 抗体療法 |
研究実績の概要 |
IL-26は主にTh17細胞が産生する炎症性サイトカインで、様々な炎症性疾患で発現増加が報告されているが、齧歯類には欠損した遺伝子であるため従来のマウス疾患モデルでは見逃されていた因子であり、解明すべき点は非常に多い。研究代表者らはこれまでにヒトIL-26がマウスの細胞にも作用することを確認し、ヒトIL-26のプロモーターを含む遺伝子領域を組み込んだバクテリア人工染色体(BAC)トランスジェニック(Tg)マウスを樹立して、様々な炎症性疾患モデルでin vivoでのIL-26の多様な役割を明らかにしてきた。 このBAC TgマウスはIL-26自身のプロモーターを使っているため、ヒトと同様にIL-26の産生能を持つ細胞が炎症誘発時など活性化した際にIL-26の発現が誘導される点が利点である。一方で、ヒトの細胞と比較してこのTgマウスのヒトIL-26の発現は1/10-1/100程度と弱い問題もある。そこで、この問題を解決すべく、Cre/loxPシステムを用いてタモキシフェン投与時に限りヒトIL-26の高発現が誘導される新たなTgマウスを開発した。これにより、炎症病態におけるIL-26の本来の機能を解明でき、IL-26抗体が難治性慢性炎症性疾患に対する革新的な治療薬として臨床応用されるための基盤となるデータを得ることができる。 今年度は新たなIL-26高発現マウスを用いると、デキストラン硫酸ナトリウム誘発性の大腸炎やブレオマイシン誘発性の肺障害が従来のBAC Tgマウス以上に激しく起こることを確認し、好中球遊走や好中球遊走ケモカインの発現が顕著に亢進していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タモキシフェン投与時に活性化したヒト細胞が産生するのと同等のレベルでヒトIL-26の高発現が誘導されるTgマウスの樹立に成功し、このマウスを用いることで今まで用いていたヒトIL-26 BAC Tgマウス以上に、炎症の悪化が起こることをデキストラン硫酸ナトリウム誘発性大腸炎モデルやブレオマイシン誘発性肺障害モデルで明らかにした。 ヒトIL-26 BAC Tgマウスを用いた際に見られていた上記の疾患モデルでの炎症部位への好中球浸潤も、新しいTgマウスではより顕著に認められ、IL-26による好中球を介した炎症増悪化ならびに臓器線維化のメカニズム解析に適していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ヒトIL-26によって炎症部位への好中球浸潤が亢進することは、これまでの様々な炎症疾患モデルで確認できているが、ヒトIL-26によって増加した好中球がコントロールマウスの好中球と比較して特徴的な機能・遺伝子発現を獲得している可能性を検討する。 また、ヒトIL-26TgマウスとIL-26を発現しないコントロールマウスとで、浸潤する免疫細胞や間質細胞の数や遺伝子発現、活性化シグナルの違いを明らかにし、IL-26によって臓器線維化が亢進するメカニズムの詳細についても解析を進める。
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