研究課題/領域番号 |
23K06506
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
天ヶ瀬 紀久子 立命館大学, 薬学部, 教授 (60278447)
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研究分担者 |
岩田 和実 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60305571)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 抗がん剤 / 小腸炎 / 線維化大腸炎 |
研究実績の概要 |
NSAIDや抗がん剤による消化管傷害は、単に薬剤の副作用としてのみならず、IBDの病態と類似する部分が多く、これらの病態解析はIBDの病態解明に繋がる可能性が期待できる。抗がん剤の5-FU連続投与による腸管粘膜の脆弱化は持続する炎症を引き起こし、粘膜の再生の遅延が生じる。これらも同様に難治性腸炎として線維性腸炎への進行が予測される。 そこで初年度は、(1)抗がん剤治療におけるQOL向上を目指した予防・治療の新たな手段を提供するため、本モデルを用いた病態解析を行った。マウスに5-FU(50 mg/kg, i.p.)を連続投与することで抗がん薬誘発腸炎マウスモデルとした。グルタミン酸ナトリウムは5-FU投与開始7日前から1日2回投与した。グルタミン酸投与は5-FU投与による体重減少には影響を及ぼさなかったが、下痢の程度は5-FU群と比較して軽度であった。また、グルタミン酸投与は、回腸組織において5-FUによるKi-67陽性増殖細胞の減少およびTUNEL陽性アポトーシス細胞の増加を抑制し、4 kDa FITC-dextranの漿膜への浸潤を抑制した。また、小腸上皮細胞株であるIEC-6細胞においてグルタミン酸処置は高い上皮バリア機能を維持することが判明し、グルタミン酸が5-FUによる腸管上皮の損傷を抑制し、保護作用を示すことが示唆された。 (2)またデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘起マウス潰瘍性大腸炎線維化モデルの確立を行った。また他線維症において、スタチン製剤がROCK1を阻害することにより線維症を抑制するとの報告があることから、確立したモデルに対してプラバスタチンを投与し、薬理効果を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、腸管線維化病態の解明と抗線維化治療薬の探索がテーマであり、小腸炎および大腸炎の病態解析モデルを確立しており、今後、線維化候補薬の探索をすすめる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)小腸炎:抗がん剤による小腸炎モデルにおいては、腸炎の治癒過程を解析するとともに、線維化への進展について検討する。(2)大腸炎:in vitro線維化モデルを確立し、筋線維芽細胞の増殖および線維化に関わるコラーゲンおよびフィブロネクチン遺伝子および蛋白発現に対する作用を検討し候補のECM分子の抽出を行う。in vivoモデルも併行して使用し、抗線維化治療薬の探索をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬等の納入の遅れがあったためであり、次年度の実験試薬および動物購入に使用する。
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