研究課題/領域番号 |
23K06521
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
安田 好文 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (50333539)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 獲得免疫細胞 |
研究実績の概要 |
まず、ヴェネズエラ糞線虫(S.venezuelensis)感染抵抗性において、CD4陽性T細胞以外にどのような細胞が関与するのかを調べるため、獲得免疫細胞の欠損するRag2欠損マウスとCD4陽性細胞除去マウスで感染抵抗性を検討した。その結果、CD4除去マウスに比較してRag2欠損マウスではより感染虫体数が多くみられたことから、CD4陽性T細胞以外の獲得免疫細胞がヴェネズエラ糞線虫に対して抵抗性に働くことがわかった。また、TSLPの標的細胞として自然免疫細胞の重要性を検討するため、Rag2欠損マウスとTSLPR/Rag2重欠損マウスにヴェネズエラ糞線虫を感染させて虫体数を比較したところ、TSLPRを欠損するとやや虫体数が多い傾向があるものの有意差はなく、TSLPの標的細胞は獲得免疫細胞が主であることが示唆された。一方で、グループ2自然リンパ球(ILC2)の重要性を検討するため、ILC2欠損マウス(Vav1-iCre/Rora-flox)にヴェネズエラ糞線虫を感染させたところ、腸管の寄生虫体数の増加、排虫の遅れが認められた。また肺胞洗浄液中の細胞を調べたところ、想定された通り好酸球が著しく減少しており、さらにST2陽性CD4陽性細胞数が半減していた。このヴェネズエラ糞線虫初感染においてTSLPの標的は獲得免疫細胞の可能性が高いが、ILC2も好酸球やTh2細胞誘導を介して抵抗性に貢献していると考えられた。TSLPR欠損マウスではTh2分化が遅れることから、ILC2とTSLPは協調してTh2分化を促し、線虫排除に関わる可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
S.venezuelensis感染に対する抵抗性に寄与するCD4陽性T細胞以外の細胞としてILC2を想定していたが、ILC2よりもむしろCD4以外の獲得免疫細胞の重要性が明らかとなった。しかし、S.venezuelensis感染後のメモリー様ILC2はNippostrongylus brasiliensis感染抵抗性に重要であること、このメモリーILC2誘導にTSLPが必要であることから、ILC2はナイーヴマウスの糞線虫初感染よりもメモリー化してからの方が感染抵抗性に重要であることがわかった。今後さらにTSLPの役割を検討していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ILC2欠損とTSLPR欠損マウスのMixed bone marrow chimera マウスを作製し、ILC2にTSLPが直接作用することを明らかにする。また細胞をin vitroでTSLP刺激し、STAT5のリン酸化などTSLPで直接活性化することを確認する。TSLPとIL-33刺激によってどの様な遺伝子が発現するか調べる。TSLPの産生細胞はin situ hybridizationや免疫染色、single cell RNA seq等で明らかにし、その誘導におけるDAMPsやES抗原の作用を検討する。またIL-33欠損マウスなどに抗CD4抗体を投与してCD4陽性細胞を除去し、TSLP以外の上皮由来サイトカインの寄生率への影響も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
TSLPR欠損マウスが出産しなくなってしまい、マウスが使用できない期間がありやや実験に遅れが生じたため。すでに凍結胚からマウス個体を作出し、使用できる状況になっているため、計画に大きな影響はなく、次年度に使用予定である。
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