研究課題/領域番号 |
23K06559
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
佐藤 好隆 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (40754940)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | Epstein-Barrウイルス / テグメントタンパク質 / BNRF1 / 不死化 |
研究実績の概要 |
ウイルス感染細胞から放出される粒子は、ウイルス粒子だけではない。エクソソームに代表される細胞外微粒子(EV)はほぼ全ての細胞から放出されるため、当然、ウイルス感染細胞からも放出される。Epstein-Barrウイルス(EBV)は、新規感染の際にEBVは感染細胞から放出されるEVにウイルスタンパク質を内包し、補助的に使用している。本研究では、EBVがどのようにウイルスタンパク質をEVに内包するか?およびEV産生をどのように制御するのか?などを明らかにすることを目指して研究を展開している。 EBVのテグメントタンパク質であるBNRF1やBGLF2はウイルス粒子にもEVにも内包される。これらのタンパク質の挙動をモニターするため、蛍光タンパク質であるmCherryを融合させたBGLF2-mCherryを発現する細胞を樹立した。今後は、この細胞を使用したスクリーニングを実施していく。 並行して、BNRF1の機能解析も実施した。BNRF1は溶解感染遺伝子ではあるが、自然宿主であるヒトB細胞では潜伏感染期にも発現が確認できた。BNRF1を欠損した組換えウイルス(EBV-dBNRF1)を感染させたB細胞は、野生型EBV(EBV-WT)を感染させたB細胞に比べて、in vitroでの増殖能が低下し、さらにマウスxenograftモデルにおいて腫瘍形成能が著しく低下することが明らかになった。BNRF1の下流で働く宿主因子としてミトコンドリアタンパク質IFI27を同定し、BNRF1-IFI27 axisの阻害により、EBV感染細胞のエネルギー産生が低下して、感染細胞の増殖能が低下することを示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的であったEpstein-Barrウイルス(EBV)感染細胞の細胞外微粒子(EV)産生メカニズムの解明はスクリーニングが完了しておらず、当初の予定よりも遅れている。しかしながら、ウイルス遺伝子BNRF1の機能解析は、不死化に対するBNRF1の影響を解明できた(上述の研究実績の概要も参照)。さらにその下流の宿主因子IFI27の同定まで成功し、論文発表することができた(予想を上回る研究成果であった)。したがって、総じて、おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
まずは当初の研究計画の1つであった細胞外微粒子(EV)産生に関わる因子のスクリーニングを完了させたい。また、引き続き、Epstein-Barrウイルス(EBV)遺伝子の機能解析も進めて行き、ウイルス感染細胞とウイルスおよび細胞微粒子の3者、さらに標的細胞も含めた4者が織りなす各種の相互作用に関して解明をしていきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初実施する予定の実験が遅れたため、次年度も引き続き継続して実施する必要があったため、次年度へ一部の研究費を繰り越した。
|