研究課題/領域番号 |
23K06578
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
山本 直樹 公益財団法人東京都医学総合研究所, 疾患制御研究分野, 主任研究員 (10547780)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | HBV / cccDNA |
研究実績の概要 |
B型肝炎ウイルス(HBV)は、感染した肝細胞内にcovalently closed circular DNA (cccDNA)として安定的にウイルスゲノムが維持されることで持続感染化するが、その維持と分解機序は未だ明らかにされていない。研究代表者はこれまで、肝細胞特異的に抗ウイルス応答を誘導するGalNAc-LNP/pICを開発し、HBV持続感染モデル動物であるヒト肝臓キメラマウス(キメラマウス)において肝臓内cccDNAを減少させることに成功した。そこで2023年度は、研究計画に沿って以下の2項目を進めた。 ①GalNAc-LNP/pICまたはVehicleを投与したHBV持続感染キメラマウスの肝臓における遺伝子発現プロファイルの比較データをもとに、発現量が変動している遺伝子名を抽出した。GalNAc-LNP/pICは抗ウイルス応答誘導剤であることから、自然免疫のシグナル経路に関わる宿主因子とエフェクター因子に着目して、抽出した遺伝子名から候補因子を絞り込んだ。 ②ウイルスDNAは、感染細胞内においてcccDNAおよびその前駆体であるrelaxed circular DNA(rcDNA)として存在している。そして、ウイルスのHBc蛋白質やHBx蛋白質と共に様々な宿主因子と複合体を形成していることが報告されているが、詳細は不明である。そこで、GalNAc-LNP/pICによるcccDNA減少に関わるエフェクター因子を探索する為、HBV持続感染キメラマウスの肝臓から抗HBc抗体を用いた免疫沈降法によりHBV-DNAと相互作用する宿主蛋白質の解析を進めている。2023年度は、HBV-DNAと蛋白質の複合体(HBV-DNA/蛋白質複合体)を精製する免疫沈降法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、「①遺伝子発現プロファイル解析データを用いた候補因子の網羅的探索」と「②HBV-DNA/蛋白質複合体のプロテオーム解析に必要な検体調整法の確立」が計画されていた。上述の「研究実績の概要」に記載したとおり、①については候補因子の絞り込みを終えた。②については、肝臓検体からHBV-DNA/蛋白質複合体を精製する免疫沈降法の確立を終えた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、GalNAc-LNP/pICを投与したキメラマウスの肝臓において発現量が変動した遺伝子を解析し、候補遺伝子を選んだ。そこで2024年度は、候補遺伝子の過剰発現またはノックダウン実験によりcccDNA量の制御に関わる宿主因子を同定する。また、研究代表者は転写因子の発現変動がcccDNAの減少に関わっているとの知見を得ていることから、その制御下にある宿主因子に注目して解析を進める。 HBV-DNAと直接または間接的に相互作用することでcccDNA量の減少に寄与するエフェクター因子の探索を、HBV-DNA/蛋白質複合体のプロテオーム解析から進める。2023年度には、HBV-DNA/蛋白質複合体を精製する免疫沈降法を確立した。そこで2024年度は、GalNAc-LNP/pICまたはVehicleを投与したキメラマウスの肝臓検体からHBV-DNAと相互作用する蛋白質を質量分析法で解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度は、当初の研究計画に従ってGalNAc-LNP/pICまたはVehicleを投与したキメラマウスの肝臓検体において発現量が変動している遺伝子を網羅的に解析した。また、ウイルス核酸と相互作用することでcccDNA量を制御する宿主因子を探索する為、HBV-DNA/蛋白質複合体を構成する因子の解析に用いる検体を精製する免疫沈降法を確立した。これらの実験が順調に進んだ為、試薬や理化学用品にかかる経費が抑えられ、次年度使用額が生じた。2024年度は、2023年度に得られた結果をもとに、研究計画に沿ってGalNAc-LNP/pIC投与により肝臓内で誘導されるcccDNA量を減少に導く宿主因子の同定を進める。また、HBV-DNA/蛋白質複合体の構成因子を同定するプロテオーム解析を実施する。従って次年度使用額は、上述の宿主因子を同定する為の遺伝子組換え実験、細胞実験、蛋白質解析実験などの試薬や理化学用品の購入に使用する。
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