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2023 年度 実施状況報告書

COVID-19の後遺症発現における新規アラーミンの関与

研究課題

研究課題/領域番号 23K06590
研究機関国立研究開発法人国立国際医療研究センター

研究代表者

鈴木 春巳  国立研究開発法人国立国際医療研究センター, 肝炎・免疫研究センター, 免疫病理研究部長 (70235985)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワードCOVID-19 / aaRS / アラーミン / 炎症 / 後遺症
研究実績の概要

COVID-19は大きな危機をもたらす新興感染症であり、重症化および後遺症発現に至る病態プロセスを解明することが急務である。重症期の急激な炎症を抑制することで生命予後が改善できる可能性は高い。我々は、aaRSが強力なアラーミンとして自然免疫を惹起することを見出し、自己免疫疾患における様々な炎症を増悪させることを示した。COVID-19患者においても重症化に伴い血清中のaaRS濃度が上昇している可能性を考え、様々な病態ステージのCOVID-19患者血清中の各種aaRS濃度を測定し、重症度や病態、血中サイトカイン濃度、生命予後との相関の解析を行った。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)における死亡要因の一つは全身性のサイトカインストームであり、重篤期に炎症を効果的に抑えることが生命予後の改善に重要と考えられる。本研究は、COVID-19の重症期においてアミノアシルtRNA合成酵素群(aaRS)の細胞外への漏出がサイトカインストームを惹起するという作業仮説を検証することを目的としたものである。
本年度に、COVID-19患者血清中のaaRS濃度をELISA法によって定量したところ、aaRSの一種であるCys-RSの血中濃度が健常人と比較して高濃度であることがわかった。さらに、COVID-19患者の病態の重篤度を4段階に分類し、それぞれの段階でのCys-RS濃度を測定したところ、病態の進行度と血中Cys-RD濃度との間に相関が見られた。これらの結果から、細胞外aaRS濃度とCOVID-19の病態形成の間には何らかの関係があることが示唆された。未年度は、後遺症発現と血中aaRS濃度との相関を解析し、さらにCOVID-19マウス感染モデル系を用いたaaRS遮断によるCOVID重症化の阻止実験を行うことにより、aaRSとCOVID-19の病態進行、および後遺症発現との関係を明らかにしてゆく予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

新型コロナウイルスによる感染症(COVID-19)は全世界に広がり莫大な被害を与え続けている社会的に重大な疾患である。特に高齢者や基礎疾患保持者で重症化、死亡する例が多く、重症化のメカニズムの解明およびその治療法の開発が急務である。我々は、最近細胞内タンパク質であるアミノアシルtRNA合成酵素(aaRS)群が強力なアラーミンとして自然免疫を強く活性化することを見出し、さらに関節リウマチの慢性炎症病態に形成にaaRSが深く関与していることを発見した。aaRSは炎症により破壊された細胞から放出され、周囲の自然免疫細胞を活性化することにより正のフィードバックループを形成し、炎症の増悪、遷延化を引き起こす。COVID-19重症期のサイトカインストームの惹起にaaRSが関与している可能性を考え、COVID-19患者の血清中のaaRS濃度を測定した。aaRSの一種であるCys-RSは、健常者においては血中には見られないが、COVID-19患者においては高濃度のCys-RSの存在が確認された。さらに、COVID-19患者を重症度別に4群に分類すると、症状が重篤化するにつれて血中Cys-RS濃度が上昇する傾向がみられた。これらの結果より、血中のCys-RS濃度はCOVID-19の重症化と相関があることが示された。

今後の研究の推進方策

本年度はCys-RSの血中濃度とCOVID-19の重症度との相関を見出すことができたが、今後はCys-RS以外のaaRS濃度との相関についても検討を進める。さらに、重症度スコアだけでなく、CRP値などの炎症マーカー値との相関も検討する。また、本研究の主題である後遺症発現の有無と血中aaRS濃度との相関について、後遺症を後に発症した患者の追跡調査から、さらに検討を行ってゆく予定である。

次年度使用額が生じた理由

患者血清サンプルの収集がまだ残っており、次年度にさらに測定を行うことが必要となり、高額なELISAキット購入にむけて次年度へと予算を繰り越す必要が生じた。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2023 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (3件)

  • [国際共同研究] Benaroya Research Institute(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Benaroya Research Institute
  • [雑誌論文] Extracellular aaRSs drive autoimmune and inflammatory responses in rheumatoid arthritis via the release of cytokines and PAD42023

    • 著者名/発表者名
      Kimura Akihiro et al
    • 雑誌名

      Annals of the Rheumatic Diseases

      巻: 82 ページ: 1153

    • DOI

      10.1136/ard-2023-224055

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Epithelial cell-derived cytokine TSLP activates regulatory T cells by enhancing fatty acid uptake2023

    • 著者名/発表者名
      Kasuya Tadamichi、Tanaka Shigeru、Tamura Jun、Etori Keishi、Shoda Jumpei、Hattori Koto、Endo Yusuke、Kitajima Masayuki、Kageyama Takahiro、Iwamoto Taro、Yokota Masaya、Iwata Arifumi、Suto Akira、Suzuki Kotaro、Suzuki Harumi、Ziegler Steven F.、Nakajima Hiroshi
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 13 ページ: 1653

    • DOI

      10.1038/s41598-023-28987-1

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 末梢CD8T細胞内Themisは接触性皮膚炎を制御する2023

    • 著者名/発表者名
      北島雅之、鈴木春巳
    • 学会等名
      The 32th Kyoto T Cell Conference
  • [学会発表] Extracellular aaRSs drive pathogenesis of rheumatoid arthritis via cytokine and PAD4 release2023

    • 著者名/発表者名
      木村彰宏、鈴木春巳
    • 学会等名
      第52回日本免疫学会学術集会
  • [学会発表] Themis regulates CD8-dependent contact hypersensitivity2023

    • 著者名/発表者名
      北島雅之、鈴木春巳
    • 学会等名
      第52回日本免疫学会学術集会

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公開日: 2024-12-25  

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