研究課題/領域番号 |
23K06591
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研究機関 | 公益財団法人神戸医療産業都市推進機構 |
研究代表者 |
和久 由佳 (仲島由佳) 公益財団法人神戸医療産業都市推進機構, その他部局等, 研究員 (40399499)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 免疫老化 / 抗腫瘍免疫 |
研究実績の概要 |
CD45RBを介した老化関連因子を同定するために、CD45RBhighとCD45RBlowナイーブCD8陽性細胞をマウスから単離し、それらから抽出したRNAを用いた網羅的遺伝子発現データを用いた解析を行った。その結果、CD45RBlowよりもCD45RBhighの細胞において発現が高い遺伝子が400存在していた。それらの中から薬剤または抗体にて制御可能なCD45RBの発現と相関する因子を選出した。これらの因子の発現パターンを確認するために、若齢と高齢マウスから単離した細胞を用いてフローサイトメ ーターによる発現解析を行ったところ、副刺激分子の発現が高齢マウス由来のCD8陽性ナイーブ細胞において増加し、免疫刺激によりその発現が減少するCD45RBのパターンと非常に相関性の高い変動を示すことが明らかになった。 高齢マウスではPD-1/PD-L1経路阻害治療により腫瘍形成が抑制されない(PD-1阻害治療耐性)。この老化表現形を利用して、副刺激分子の阻害がT細胞老化を改善させられるのかどうかを抗体を用いた阻害実験により検討した。まずはじめに高齢マウスにがん細胞を移植し腫瘍形成を誘導した。その後、抗PD-L1抗体と共に副刺激分子に対する阻害抗体の投与を行った。その結果、抗PD-L1抗体の単独投与に対して耐性を示す高齢マウスにおける腫瘍形成が、抗副刺激分子抗体と共に投与することで強く抑制された。これらの結果から、ナイーブT細胞において老化に伴い副刺激分子の発現が増加することで、CD8陽性細胞の抗腫瘍能が抑制され、その結果、PD-1阻害治療耐性となる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りに候補因子を同定し、その個体における機能の解析を行い、良好な結果を得ることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
同定した共刺激分子の単独使用により、T細胞老化が改善されるのかどうかを高齢マウスにおいて見られる老化表現形の1つであるPD-1阻害治療耐性を指標に担がんマウスモデルにて検討する。その際、高齢マウスのCD8陽性T細胞の機能や抗腫瘍活性が改善するかどうかを活性化マーカーの発現、抗原への反応性や抗腫瘍効果を指標に検討する。 加齢に伴い抗原に対して反応性が低下することはT細胞老化の1つの特徴であり、PD-1阻害治療耐性にも関わる可能性が考えられる。この抗原反応低下に対して同定した共刺激分子が関与しているのかどうかを検討するために、共刺激分子の発現レベルの異なるCD8陽性ナイーブ細胞を単離培養する。この実験には、卵白アルブミン(OVA)ペプチドの添加により抗原特異的な反応を効率的に引き起こすことができるOT-1マウスを用いる。抗原特異的な反応を誘導した後に、細胞増殖、活性化マーカーの発現やサイトカイ ン産生を指標に反応性の違いを評価する。 サイトカイン量は老化に伴い変動し、免疫細胞の活性化を制御する。そこで、老化に伴う共刺激分子の発現亢進にサイトカインが関与しているかどうかを検討するために、様々なサイトカインとナイーブCD8陽性細胞との共培養を行う。その効果をナイーブ細胞における共刺激分子の発現変動と共に、細胞増殖や活性化サブセットなどの変化により検討する。
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