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2023 年度 実施状況報告書

質量分析技術を用いた大腸癌特異的リン脂質性バイオマーカーの機能解明

研究課題

研究課題/領域番号 23K06607
研究機関東京大学

研究代表者

園田 洋史  東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80770205)

研究分担者 石原 聡一郎  東京大学, 医学部附属病院, 教授 (00376443)
佐々木 和人  東京大学, 医学部附属病院, 講師 (00781238)
室野 浩司  東京大学, 医学部附属病院, 講師 (70773951)
野澤 宏彰  東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (80529173)
研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワード大腸癌 / リゾリン脂質 / リゾホスファチジルイノシトール
研究実績の概要

生体内には多くのリゾリン脂質(LPLs)が存在し、LPLsは特異的な受容体を介して生物活性を発揮する。リン脂質がホスホリパーゼにより加水分解されLPLsは産生されるが、LPLsは直接遺伝子にコードされないため、直接解析することは困難であった。しかし質量分析技術の向上により様々なLPLsの定量が可能となった。我々はこれまで、大腸癌組織に質量分析技術を応用し、大腸癌でリゾホスファチジルイノシトール(LPI)が増加することを明らかにした。さらに近年、質量顕微鏡技術の向上により組織におけるLPLsの局在解析も可能となった。
今年度我々は、大腸癌組織におけるLPIの局在を、脂肪酸分子種ごとに明らかにすることを目的として解析を行った。また、LPIの基質となるホスファチジルイノシトール(PI)の大腸癌組織についても解析を行った。LPIは、脂肪酸を構成する炭素数が18個、不飽和結合数が1ヶ所のものを18:1 LPI等と記載する。まず、質量顕微鏡を用いて大腸癌選択的に増加したLPI分子種の局在の解析を行った。さらにLPIの基質となるPI分子種の局在解析も併せて行った。その結果、LPI, PI分子種に特徴的な局在を示すことが明らかになった。
大腸癌組織において、18:0 LPI, 18:1 LPI, 18:2 LPIは癌組織の周堤に局在した。20:4 LPIは炎症細胞の局在する癌の浸潤部に局在した。また22:6 LPIは少量ではあるが癌組織にびまん性に局在した。さらに我々は、LPIの基質となるホスファチジルイノシトール(PI)についても局在解析を行った。その結果、34:1 PI, 36:1 PIは癌組織の周堤に局在した。38:4 PI, 38:5 PI, 40:5 PIは炎症細胞の局在する癌の浸潤部に局在した。40:6 PI, 40:7 PIは癌組織にびまん性に局在した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度施行した解析には5症例の大腸癌手術検体より得られた凍結切片を使用した。各症例から4ヶ所の癌部と正常粘膜を含む組織片を回収し、それぞれの10μmの凍結切片を作成した。HE染色にて癌部と非癌部が適切に評価可能であることを確認した後、解析に用いる方針とした。このように選択した凍結切片はマトリックスコート後、質量顕微鏡で解析を行った。その結果、大腸癌組織において、18:0 LPI, 18:1 LPI, 18:2 LPIは癌組織の周堤に局在していた。20:4 LPIは炎症細胞の局在する癌の浸潤部に局在していた。また22:6 LPIは少量ではあるが癌組織にびまん性に局在していていた。さらに我々は、LPIの基質となるホスファチジルイノシトール(PI)についても局在解析を行った。その結果、34:1 PI, 36:1 PIは癌組織の周堤に局在していた。38:4 PI, 38:5 PI, 40:5 PIは炎症細胞の局在する癌の浸潤部に局在していた。40:6 PI, 40:7 PIは癌組織にびまん性に局在していた。LPIやPIの大腸癌組織における局在は、再現性のある分布を示していた。
また、細胞レベルでのLPIの機能解析についてもpreliminaryな解析を開始している。大腸癌細胞株にLPIを細胞外から作用させ、惹起されるシグナル伝達経路を解析する予定である。現在、LPI受容体であるGPR55を発現している細胞株のスクリーニングを行っている。

今後の研究の推進方策

今年度の我々が施行した。大腸癌組織におけるLPI, PIの質量顕微鏡による局在解析により、PIからLPIが産生される部位やそのメカニズム、LPIが作用する癌微小環境の同定に繋がる可能性が示唆された。次年度は、LPIの産生酵素:DDHD1や受容体:GPR55のタンパク質の発現を、質量顕微鏡解析に用いた同一検体の連続切片を用いた解析により明らかにしていく予定である。また同時に、RNA scope を用いたin situ hybridization法により、DDHD1や受容体:GPR55のmRNAレベルでの発現分布を明らかにする予定である。また、細胞レベルの実験についても解析を進めていく予定である。大腸癌細胞株(SW480, HT29, Lovo, Caco2 など)に対するLPI刺激により惹起されるシグナル伝達経路を解析する予定である。さらにsiRNA法により、GPR55に対する発現抑制を行い、シグナル伝達に及ぼす影響を評価する予定である。またLPI刺激により惹起される大腸癌細胞株の細胞増殖活性をMTS assayで、細胞遊走活性をMigration assayで評価する予定である。

次年度使用額が生じた理由

次年度、大腸癌凍結切片を用いたRNA scopeによる、in situ hybridization法を予定している。現段階でprobe作成を進めているが、実際に購入するprobeが未だ決定していない状況である。positive control, negative controlなどを含めたprobeや反応試薬購入のため、予算189,496円を次年度に使用することにした。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2024 2023

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] 質量顕微鏡による大腸癌組織におけるリゾホスファチジルイノシトールの局在解析2024

    • 著者名/発表者名
      園田洋史、佐々木隆義、江本成伸、室野浩司、佐々木和人、野澤宏彰、石原聡一郎
    • 学会等名
      第110回日本消化器病学会総会
  • [学会発表] 大腸癌組織におけるリゾリン脂質性メディエーターの機能解析2023

    • 著者名/発表者名
      園田洋史、品川貴秀、永井雄三、阿部真也、横山雄一郎、松崎裕幸、室野浩司、江本成伸、佐々木和人、野澤宏彰、石原聡一郎
    • 学会等名
      第85回日本臨床外科学会総会

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公開日: 2024-12-25  

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