研究実績の概要 |
マイクロエクソンは長さが30塩基以下の極めて小さなエクソンである。本研究の代表者はこれまでに、大腸の正常組織と比べて腫瘍組織でスプライシングパターンが変化する腫瘍特異的マイクロエクソンを同定し、そのスプライシング変化が大腸がんの転移と関連することを明らかにした。しかし、腫瘍細胞とそれをとりまく微小環境との間のどのような相互作用がマイクロエクソンのスプライシングを変化させるのか、スプライシング変化はコードするタンパク質の機能にどのように作用してがん細胞を転移させるのか、については不明である。本研究では、1)タンパク質リン酸化酵素focal adhesion kinase (FAK) 遺伝子がもつ、長さ9塩基、3アミノ酸をコードするマイクロエクソンの機能を明らかにすること、2)血管を循環している大腸がん細胞(circulating tumor cell, CTC細胞) がもつ腫瘍特異的マイクロエクソンを同定し、そのスプライシング変化が大腸がんの転移に果たす役割とその分子基盤を解明すること、を目的とした。 令和5年度には、FAK遺伝子をノックアウトした大腸がん細胞にFAK cDNAを再導入し、マイクロエクソンの有無に違いのある2つのFAK発現細胞を作製した。その結果、マイクロエクソンの有無の違いにより、FAKの基質タンパク質Paxillinのリン酸化状態にわずかな違いが認められる予備的な実験結果が得られた。このことから、マイクロエクソンの有無は、FAKでは酵素活性の調整に寄与しているのかもしれない。しかしながら、研究代表者が本研究実施機関を退職することに伴い、本研究をここで終了することとした。
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