研究課題/領域番号 |
23K06656
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
森 智章 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (30464853)
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研究分担者 |
中山 タラントロバート 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (00365298)
浅野 尚文 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (10445299)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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キーワード | 腫瘍オルガノイド培養 / 神経鞘腫 / 神経線維腫 / 悪性末梢神経鞘腫 |
研究実績の概要 |
末梢神経に発生する神経鞘腫、神経線維腫、そして悪性末梢神経鞘腫はシュワン細胞由来の腫瘍であり、新規薬剤の開発が望まれております。申請者は本研究にて腫瘍組織を生きたまま、生体の環境に類似した環境下で培養し、解析することが可能なオルガノイド培養の手法を用い、神経鞘腫、神経線維腫、そして悪性末梢神経鞘腫の世界初の腫瘍オルガノイド株の樹立を目指して研究計画書を提出し、承認を得て研究を開始いたしました。 初年度は、末梢神経に発生する腫瘍である神経線維腫、神経鞘腫、悪性末梢神経鞘腫の手術検体を採取し、腫瘍細胞を取り出し、matrigelに溶かし、無血清下でオルガノイド培養を行っております。この手法は、大腸がんや膵がん、前立腺がんなどで樹立された方法(Matano et al, 2015: Boj SF et al, 2015: Gao D et al, 2014)と同様の手法を用いております。同時に採取した検体の一部は、正常組織とともに遺伝子検査用に凍結保存しております。これらの凍結検体は2年目以降に、RNAseq、DNAseqを行う予定です。腫瘍の増殖に必要なニッチ因子(Growth factorやサイトカインなど)を組み合わせて、最も高率に腫瘍が増殖し、生存するオルガノイド培養条件を明らかにするために、これまで用いたニッチ因子の濃度条件をふって条件検討を行っております。腫瘍オルガノイド株が樹立できたかどうかは、オルガノイドの末梢神経に特異的に染色される免疫染色(S100, MBP, Sox10)のプロファイルを確認いたしました。すでに3人の神経鞘腫の患者検体を用いたオルガノイド培養を行っており、末梢神経に特異的な染色を確認しております。ニッチ因子は因子Aの濃度が腫瘍の増殖に正に相関している可能性が示唆されております。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は適切な検体収集が極めて重要となります。切除検体を速やかに腫瘍オルガノイド培養すること、また適切な腫瘍量が確保できることがオルガノイド樹立の成功に重要ですが、数検体で切除からオルガノイド培養開始までにタイムラグがあったことや腫瘍量が少なかったことで腫瘍オルガノイド株が増殖しませんでした。本研究の「問い」に対する解析を行うためには、さらに多くの腫瘍オルガノイド株の解析が必要と考えております。適切な症例、適切なタイミングで、引き続き検体収集を行ってまいります。
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今後の研究の推進方策 |
腫瘍オルガノイド株の安定した樹立を目指し、引き続きニッチ因子の濃度条件設定を行っていきます。また樹立したオルガノイド株を免疫不全マウスの皮下に移植する予定です。また10症例以上の凍結検体とオルガノイド株が揃った段階で遺伝子解析を行う予定です。遺伝子解析は、DNAseq、RNAseqを行い、オルガノイド株と凍結検体での比較検討を行う予定です。遺伝子解析の結果を踏まえ、新規のニッチ因子の探索も検討しており、オルガノイド株で高発現しているGrowth factorやcytokineのレセプターに対するリガンドをニッチ因子に含めることにより、オルガノイド株の増殖が促進されるかどうか検討する予定です。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会に参加予定であったが,状況を鑑みて見送った.使用予定であった試薬が,年度内入荷が見込めなかった. 以上の理由などから執行計画に変更が生じた. 持ち越した予算は、予定している実験・解析等にかかる費用等へ充てる計画としている
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