研究課題/領域番号 |
23K06660
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
渡辺 崇 藤田医科大学, がん医療研究センター, 准教授 (10402562)
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研究分担者 |
榎本 篤 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (20432255)
柳 久乃 藤田医科大学, 医学部, 講師 (40868949)
武藤 淳 藤田医科大学, 医学部, 准教授 (30383839)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 脳腫瘍 / がん幹細胞 / 不均一性 / リン酸化シグナル |
研究実績の概要 |
本研究ではリン酸化シグナルに焦点を絞り、膠芽腫の治療抵抗性がん細胞の多様性を制御する分子機構を明らかにし、多様性の克服戦略を勘案することを目指している。 本年度は、遺伝的背景が同一で表現型が異なる2種類の人工治療抵抗性膠芽腫がん細胞(ATS, BTS)を用いて、リン酸化プロテオミクス解析により各細胞に特徴的なリン酸化タンパク質の同定を試みた。具体的には、それぞれの細胞からリン酸化セリン・スレオニンに特異的に結合する14-3-3-を用いてプルダウンを行うことでリン酸化タンパク質を濃縮し、質量分析計を用いて網羅的に同定した。その結果、ATSあるいはBTSに特徴的なリン酸化タンパク質が明らかになった。それらタンパク質に関しては、ウェスタンブロットにより各細胞でリン酸化レベルが異なるか確認した。それら候補タンパク質のうち、脳腫瘍の悪性度や脳腫瘍がん幹細胞の維持に関与すると報告されていたGiridnに絞り、その後の解析を進めた。 GirdinはBTSに特徴的なリン酸化タンパク質として同定されたため、BTS中でリン酸化が亢進していると考えられる。Girdin中のリン酸化サイトを同定するために、COS7細胞にGridinの様々なフラグメントを発現させ、14-3-3でプルダウンを行いリン酸化部位の同定を試みた。その結果、GirdinのC末端側1490番目のセリン(ヒトの場合)が14-3-3の結合に必須のアミノ酸であり、このセリン残基のリン酸化がBTS中で亢進していることが示唆され、Girdinのリン酸化レベルが膠芽腫の治療抵抗性がん細胞の多様性を制御する可能性が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はリン酸化シグナルに焦点を絞り、膠芽腫の治療抵抗性がん細胞の多様性を制御する分子機構を明らかにすることを目標としている。本年度は、遺伝的背景が同一で表現型が異なる2種類の人工治療抵抗性膠芽腫がん細胞(ATS, BTS)を用いて、多様性を制御するリン酸化タンパク質の同定に成功していた。さらに、研究対象としてGirdinに焦点を絞り、in vitroでの14-3-3を用いたプルダウンによってBTS中でリン酸化が亢進されていると考えられるGirdin中のセリン残基(ヒトの1490番目)を同定することに成功している。これらの結果を鑑み、本研究課題は現在までは概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はGirdinに絞った解析を進め、阻害剤やin vitroのキナーゼアッセイにて、Girdinのリン酸化を担うキナーゼの同定を進める。また、本年度に同定したATS/BTSに特徴的なリン酸化タンパク質群を元に、バイオインフォマティクス的な手法を用いて、各細胞に特徴的なリン酸化シグナルの同定を試みる。さらに、CRISPR/Cas9技術を用いてGirdinをノックアウトした膠芽腫の治療抵抗性がん細胞の作製、Girdinの治療抵抗性がん細胞における機能解析を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究試薬の使用量を節約することに成功したため、次年度使用額が生じた。来年度は試薬価格の高騰もあり、予定通り使用する予定である。
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