研究課題/領域番号 |
23K06678
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
西田 満 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (30379359)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | Rif低分子量Gタンパク質 / 癌細胞クラスター / 癌浸潤 |
研究実績の概要 |
Rifは細胞膜だけでなく核膜内膜と核質にも局在することを見出した。また、培養細胞にRifを過剰発現させると核がいびつに変形することを見出した。特に、内在性にラミンAをほとんど発現していない293T細胞では、Rifの過剰発現によって核膜にチューブ状の突起構造が形成された。その核膜突起にはDNAは含まれていないが、Rifと核膜タンパク質エメリンの蓄積が観察された。そのような核膜変形は、核局在シグナルNLSを付加したRif(NLS-Rif)の過剰発現でも観察されたが、核外移行シグナルNESを付加したRif(NES-Rif)の過剰発現では観察されなかった。また、Rifノックアウト細胞に野生型Rif、NLS-Rif、NES-Rifをそれぞれ安定発現させ、それらの浸潤能を比較した結果、野生型Rifに比較してNLS-RifとNES-Rifはどちらも浸潤能を促進するはたらきが顕著に弱いことが示された。これらの結果は、Rifが細胞膜と核の両方に局在することが、効率的な癌細胞浸潤に必要であることを示唆している。次にマトリジェル上に播種した癌細胞の動態を観察した。その結果、播種後24時間以内に細胞同士が集合し、その後チューブ状に繋がった血管擬態を形成した。このような形態変化は悪性度の高い癌細胞で顕著に認められた。また、Rifの発現を抑制した結果、マトリジェル上での癌細胞の集合は認められたが、その後の血管擬態形成は起こらなかった。したがって、Rifは癌細胞の血管擬態形成に関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マトリジェル上での癌細胞クラスターの形成過程を観察した結果、クラスターを形成するだけでなく、クラスター形成語に血管擬態を形成することが新たに見出された。また、Rifの各種変異体の発現実験から、核内のRifが核膜にチューブ状の突起構造を形成させることも新たに見出された。これらの新規の知見を定量的に解析するための方法の検討に時間を費やしたため、他の計画にやや遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
マトリジェル上での癌細胞のクラスターおよび血管擬態形成過程におけるRifの細胞内局在を、免疫染色およびライブイメージングを用いて解析する。ライブイメージングでは、GFP-Rifと共にmCherry-ヒストンH2B(核を可視化)またはmCherry-CAAX(細胞膜を可視化)を発現する癌細胞を用いる。また、免疫染色はすでに条件検討済みの抗体と方法を用いて行う。また、ハンギングドロップ法を用いて癌細胞クラスターを作製し、これをマトリジェル内に包埋してライブイメージング解析を行う。この方法により、Rif KO細胞でも野生型(WT)細胞と同様にクラスターを作製できることを確認している。本実験では、WT細胞とRif KO細胞をそれぞれクラスター化するだけでなく、両者を異なる蛍光色素で標識し、様々な割合で混合したヘテロなクラスターの作製も行う。これらの解析から、クラスターの表層と内部という異なる環境におけるRifの役割を明らかにする。特に、癌細胞クラスターの表層と内部で観察されるRifの細胞内局在の違いが、集団浸潤に与える意義について検討する。そのため、Rif KO細胞にGFP-Rifの野生型または各種改変型を安定発現させたレスキュー細胞を作製する。これらレスキュー細胞におけるRifの活性状態をGST-mDia1 Rho binding domain (RBD)を用いたGSTプルダウン法により確認し、その後ライブイメージングおよびマウスモデルを用いた解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新規の知見に関する定量的解析に時間を費やしたため、他の一部の計画を行うことができず次年度使用額が生じた。翌年度に当該実験を実施する予定であり、翌年度分として請求した助成金と合わせて使用する。
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