研究課題/領域番号 |
23K06681
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
仁平 直江 聖マリアンナ医科大学, 医学研究科, 講師 (40589470)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | PD-L1 |
研究実績の概要 |
乳がんは罹患率・死亡率ともに一貫して年々増加していることから、早期診断法・治療法の確立が早急に必要であるとされている。近年の乳がん治療においては、ホルモン療法が効かず、悪性度の高いトリプルネガテイブ乳がんへの治療として免疫チェックポイント阻害剤の有効性が示されている。免疫チェックポイント分子PD-L1は多くの癌細胞で高発現が報告されており、T細胞上のPD-1と結合することで免疫寛容を引き起こす分子である。PD-L1はDNA損傷に伴い、細胞膜上から核内へと局在を変えることが知られているが、核内での機能はほとんど明らかとなっていない。核内のPD-L1の機能は免疫チェックポイント阻害剤では抑制することができない為、研究代表者らは核内PD-L1の機能とその分子制御機構を明らかにすることで、核内PD-L1を標的とした乳がん治療の確立を目指している。 核内PD-L1の機能を明らかにするために、質量分析によって同定されたPD-L1新規結合分子の中から、DNA損傷応答因子ATRに注目して解析を行った。トリプルネガティブ乳がん細胞株の内在性PD-L1を欠失させると、DNA損傷によって引き起こされるCHK1のリン酸化が低下することを見出した。CHK1はクロマチン上に局在し、ATRからのシグナル伝達に寄与している。PD-L1の存在下/非存在下でのCHK1のクロマチン局在について比較を行なった結果、PD-L1の非存在下ではCHK1はクロマチンに局在できないことが明らかとなった。このことから、PD-L1はCHK1の細胞内局在を制御することでDNA損傷のシグナル伝達に寄与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までの研究から、新たなPD-L1の核内機能を明らかにすることができた。そして現在、その生物学的意義を明らかにするための実験を進めている。学術会議での講演の際にも、研究領域の近い先生方からコメントをいただき、論文化に向けた最終仕上げに取り掛かっている。
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今後の研究の推進方策 |
PD-L1によるCHK1の細胞内局在制御が核内のPD-L1によるものであることをより明確化にするために、PD-L1が核内移行できない条件下や変異体、核内以降の阻害剤を用いた実験を行う。また、DNA損傷を導入するために、これまではアドリアマイシンを用いていたが、放射線やNCSなどを添加した際の反応についても検討する。さらに、PD-L1の発現の低い癌にPD-L1を導入した際の反応についても検討する。
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