研究課題/領域番号 |
23K06682
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
和田 昭裕 近畿大学, 医学部, 助教 (70253698)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | KRAS / 内在化抗体 / CADM1 |
研究実績の概要 |
(1)抗体A scFv の取得と機能確認:CADM1抗体A遺伝子のCDR情報を基に抗体A scFvをデザインした。そしてこの抗体A scFv を抗Synasis抗体(ヒトIgG1;Synasisはウイルス蛋白で哺乳類の体内には存在しない)と融合させた(抗体A scFv付加型抗Synasis抗体)。CADM1を発現している膵腺癌細胞株Panc-1の細胞ライセートを抗体A scFv付加型抗Synasis抗体と反応させた後ゲルシフトアッセイに供したところ、抗体A scFv付加型抗Synasis抗体は抗体Aと同様にCADM1への結合性を示した。 (2)抗体A scFv とプリツヌマブ(ヒトIgG1)を融合させた。その際、介在部のアミノ酸配列(ペプチドリンカー構造)について検討し、ある種のカテプシン認識配列の介在によって抗体A scFv とヒトIgG1が切り離されることを確認した。 (3)毒性試験:抗体Aに細胞毒MMAE(チューブリン重合阻害薬)を結合させた複合体(抗体A-MMAE複合体)について、マウスへの静注による毒性試験を行った。重篤な組織傷害・臓器傷害は生じなかったが、精巣において精子低形成が生じた。CADM1は精原細胞に高発現しており、on-target effect と考えられた。 (4)類内膜腺癌に対する抗体A-MMAE複合体の殺細胞活性:抗体A-MMAE複合体は類内膜腺癌細胞株に対してCADM1発現依存性及び濃度依存性に殺細胞活性を示した。CADM1発現類内膜腺癌細胞株 HEC-50B 及び JHUM-3 に対する同複合体のmaximal inhibitory concentration (IC50) はそれぞれ0.314 μg/mL及び3.722 μg/mL であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究アイデアの基礎を成す重要な所見は得られたが、進捗が計画通りに順調であるとしなかった主たる理由は、抗KRAS抗体Y13-259 (GenBank: X55179.1, X55180.1)について遺伝子クローニングが未完了だからである。現在、遺伝子配列情報に基づいてY13-259を抗KRAS二価抗体としてどのようにデザインするべきか検討を行っている。 また、抗体A scFv を抗KRAS二価抗体と融合させるに当たって、介在部のアミノ酸配列(ペプチドリンカー構造)について検討し、カテプシン認識配列の有効性を見出したが、至適化するには至っていない点も考慮した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)抗KRAS二価抗体を急ぎクローニングし、組換え抗体として精製する。抗体Aとクロスリンクにて結合させ、その抗体-抗体複合体がCADM1発現依存性に内在化するか調べる。(2)抗体A scFvと抗KRAS抗体とを遺伝子組み換えにて融合させる(抗体A scFv付加型抗KRAS抗体)。その際介在部にはカテプシン認識配列をペプチドリンカーとして挿入する。(3)抗体A scFv付加型抗KRAS抗体がCADM1発現依存性に細胞に内在化するか調べる。(4)抗体A scFv付加型抗KRAS抗体が細胞内で抗腫瘍活性を示すか検討する。KRAS変異を有し、かつCADM1を発現する癌細胞株(膵腺癌MIA PaCa-2(KRAS G12C)、肺腺癌 NCI-H441(G12V)、大腸腺癌SW480(G12V)等)において、KRASシグナルを阻害し、細胞の増殖を抑制するか調べる。(5)抗KRAS抗体活性が最大となるようにリンカー配列を至適化する。(6)抗体A scFv付加型抗KRAS抗体について毒性試験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本課題1年目(本年度)は既存の研究資源を有効活用することによりかなりの実験を実施することが出来たため、研究費は予定を下回ることとなった。 本課題2年目(次年度)は研究計画の展開に伴い下記の試薬を必要とする。 【消耗品費】以下の消耗品は申請者が研究を行うにあたり必須である。 1一般試薬・理化学用品(各種ディスポプラ スチック器具 、各種生化学実験試薬、抗体を含むウエスタン解析用試薬、ルシフェラ ーゼアッセイ試薬等を 含む) 、2細胞培養試薬・器具(細胞培養用シャーレ、ウシ胎児血清、細胞培養用培地、遺伝子導入試薬、細胞増殖能測定試 薬等を 含む)、3遺伝子作成解析試薬・器具(細菌培養試薬、プラスミド精製試薬、合成核酸、シークエンス用試薬等 を含む)、4抗体作製 関連(抗体精製、抗体薬物複合体作製等を含む)。
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