研究実績の概要 |
小児がんの治療成績の改善により7割以上の患者に長期生存が期待できるようになったが、原疾患や治療に伴う晩期合併症や二次がんが問題となってきた。本研究では、北海道の小児がんの長期生存者の大規模コホートを用いて、生殖細胞系列遺伝子バリアント解析の意義を検討することを第1の目的とする。既に病的意義が明らかなバリアントについては結果を患者に原則開示するが、その際の遺伝カウンセリングの手順を確立することを第2の目的とする。 研究対象者は北海道内の病院でフォローされている小児がん患者で目標症例数は100例と設定している。設定根拠は北海道内でフォローされている小児がん患者は約1000例であり、その約1割の100例が遺伝子解析に対する同意が取得できるものと想定される。初年度は20-30例の症例集積を目標としていたが、実際に約20例の症例を集積することができた。遺伝子解析は業者に委託し、1患者あたり約5-6万円、対象遺伝子は①がん易罹患性遺伝子(Cancer predisposition genes) 常染色体顕性:ALK, APC, BRCA1, BRCA2, TP53など ②がん易罹患性遺伝子(Cancer predisposition genes) 常染色体潜性:ATM, BLM, FANCA, FANCCなど ③kinase関連遺伝子: EGFR, KITなど ④がん抑制遺伝子: AXIN1, BARD1など ⑤その他の遺伝子に分類し、計158の既知の遺伝子とした。初年度助成金は予定通り全て遺伝子解析費用として使用した。今後は今回の解析結果を臨床情報との関連性について更に解析をすすめると同時に意義のある生殖細胞系列の遺伝子バリアントを認めた症例に対して遺伝カウンセリングも進め、課題を抽出していく。また次段階の症例集積に向けて患者のリクルートをすすめていく予定である。
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