研究課題/領域番号 |
23K06697
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
木下 康之 広島大学, 病院(医), 講師 (90750993)
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研究分担者 |
田原 栄俊 広島大学, 医系科学研究科(薬), 教授 (00271065)
山崎 文之 広島大学, 医系科学研究科(医), 准教授 (60444692)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | mRNA / Pit-NET / 診断バイオマーカー / pituitary adenoma |
研究実績の概要 |
本年度の研究期間において、292症例の非機能性神経下垂体内分泌腫瘍(Pit-NET)の患者の再分類を行った。PIt-NETは2022年から下垂体腺腫からPit-NETへと名称変更が推奨された。また、2017年の改訂から推奨されていた転写因子による分類はほぼ必須となった。したがって、Pit-NETの分類には転写因子を全例で染める必要があり、本研究の第一歩はこれまでの当院での症例を新基準に則って分類をしなおすことであった。WHO2022の改訂に沿って、Pit-1、GATA3という既存の転写因子に加え、新たにT-PIT抗体を購入し、染色を追加した。その上で、再分類したPIt-NETをさらに臨床所見と画像所見を交えて解析し、Invasveな腫瘍と転写因子の関連性を見出した(Taguchi A, Kinoshita Y. Neurosurg Rev. 2023;46:317)。分子遺伝学的な側面と臨床的な側面の関連性を明らかにしたものである。 ついで、本研究の一つの重要な目標である「難治の腫瘍マーカーを見つける」ため、その中から、InvasiveなNull cell tumorとInvasiveではないGonadotroph tumorを5個ずつ選択し、凍結検体からmRNAを抽出し、保存することができた。48検体まで一括でRNAシーケンス可能であることから、もう少し症例を追加し、解析を待機している状態である。 また、最近ではNull cell tumorは転写因子やホルモンが染まりにくいのみで厳密には存在しない可能性が報告されている。今後分子遺伝学的な評価がより重要視されることが予測される。したがって、昨年度に新たにPit-NETと診断した40症例の検体を-80度で凍結保存し、それぞれホルモン分泌が確認された腫瘍、転写因子のみが確認された腫瘍、Null cell tumorであった腫瘍を同様にmRNAの抽出を行う予定としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り、過去のPit-NET症例の免疫染色を終え、再分類が終了した。今後も手術症例を蓄積し、同様に分類していく。RNAの抽出も10症例まで終了し、保存することができている。臨床的にInvasivenessを示す腫瘍の数はそこまで多くないため、10症例にとどまっている。
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今後の研究の推進方策 |
診断基準についてはまだまだ議論されている部分も多いため、新たにP53の免疫染色も追加することとした。また、Null cell tumorは詳細な検討すると存在しない可能性がある、という報告(前述)もなされている。これらについてもNull cell tumorとホルモン分泌はないが転写因子は染まる腫瘍、そしてそれ以外の腫瘍のmRNAをそれぞれ比較し、検討をすすめていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
RNAシーケンスの費用が余っている状況である。令和6年度に行う予定としている。令和5年度にシーケンスを行った場合は使用額がマイナスとなる見込みであった。マイナスとなる見込みとなってしまった理由として、患者データを入れていた外付けHDDが破損し(おそらく経年劣化)、新たなデータディスクと患者データの救出のための予期しない出費があったためである。 令和6年度ではRNAの抽出をすすめ、48検体まとめた段階で一括してシーケンスを行う予定としている。
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