研究課題/領域番号 |
23K06711
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
土井 愛美 筑波大学, 附属病院, 病院助教 (30771654)
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研究分担者 |
小田 竜也 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20282353)
古屋 欽司 筑波大学, 医学医療系, 講師 (20867915)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 長期経過観察 / 残膵再発 / 統計学的処理 |
研究実績の概要 |
膵癌は、病理診断で比較的早期の癌でも根治切除後に高率な再発を認めるが、一部の患者では切除後に10年以上の長期生存例も存在することがわかっており、その生物学的振る舞いの差が治療前の病期診断に必ずしも一致しない。 現在、根治切除後の膵癌の生命予後を規定する因子として一般的に知られているものは、術前のC A19-9の値や術後化学療法の導入時期などである。臨床的には、残膵や肺の転移巣では切除により予後の延長が認められる一方で、肝転移や播種では、多発することも多く、転移後の予後期間も極めて短いことを経験してきた。さらに、10年以上無再発で経過し突如として残膵に腫瘍を生じることがあり、再発形式として残膵に再発する症例では、後方視的に予後が非常に良好であったり、極めてSlow golowingである可能性があると考えられた。このため、当研究では、再発形式の違いによる予後の差を統計学的に示す必要があると考えた。2023年度はこの統計学的な情報を収集することを中心に研究を進めた。残膵に再発する症例は他再発形式に比較して症例数が圧倒的に少なく、統計学的な有意差をつけることが困難であることがわかった。また、5年以上の長期予後が得られている場合、経過観察が終了されており、実際にはその後に膵癌の再発をきたしていても不明として扱われている可能性も考えられた。昨年度は実際に術後10年で残膵に再発を認めた患者が1名いた。息の長い外来経過観察を行うことで、これらの希少な再発形式の患者を洗いだすことが必要であると判断している。 分子異常の観点では、特定の遺伝子変異を持つ患者が、良好な予後であったり、薬物療法への反応性が良いことが示唆されている。希少性のある予後良好である群を特出することで、特徴的な変異を特定できるのではないかと考えているが、症例数が少ないため、解析するために症例を蓄積する必要性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
残膵再発群の数が少なく、また経過観察期間を終了している患者の数も多いため、統計学的な処理が困難となっている。
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今後の研究の推進方策 |
他再発形式の患者や、その他の予後良好な群との比較や、それらの群の遺伝子解析を並行して施行することを検討する。 また、腫瘍部を精密に評価するために、当科で施行している病理組織学的解析ソフトとのコラボレーションで遺伝子解析の方をスムーズに行えるように工夫していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
残膵再発症例の数が少なく、遺伝子解析に必要な組織学的処理が進まなかった。このため、来年度以降に今年計画していた解析のための金額を使用する。また、その他の予後良好な群の解析を検討する。
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