研究課題/領域番号 |
23K06719
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
小林 規俊 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (00347296)
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研究分担者 |
川崎 ナナ 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 教授 (20186167)
市川 靖史 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (70254208)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 神経内分泌腫瘍 / バイオマーカー / 神経内分泌癌 |
研究実績の概要 |
Neuroendocrine neoplasm(NEN)は神経内分泌マーカーを発現する悪性腫瘍の総称であり、様々な臓器に発生することが知られている。発生頻度は低くいわゆる希少がんに属する。NENは神経内分泌腫瘍(NET)と神経内分泌癌(NEC)に大別される。NETはカルチノイドなどともよばれ緩徐な進行を呈する疾患群であり、NECは小細胞癌、大細胞癌などの名称でも知られ、極めて悪性度の高い疾患群である。両者は全く異なる悪性度、遺伝子異常を呈するため、名称の類似性とは乖離して、別の発がん過程による生じた異なるがん種であると考えられている。このようにNENは、病理学的に不均一な疾患であり、これらを区別するバイオマーカーは無く、診断や個別化的な医療の提供を妨げる要因となっている。本研究では、NEN患者の血清および腫瘍組織から得られた糖タンパク質を解析し、NENの個別性を区別するバイオマーカー候補を同定し、大規模臨床試験へ繋げることを目指している。 本年度は、まず、NEN患者由来血清グライコプロテオミクスに向けた、サンプル調製方法の最適化を実施した。がんに特徴的な糖鎖の濃縮を目的として、レクチンとしてLCA(α1-6フコース認識レクチン)とMAL II(シアル酸認識レクチン)を選択し、市販血清を用い、各ビオチン化レクチンとストレプトアビジン磁気ビーズの吸着量と反応時間を検討した。次に、血清試料からの糖ペプチド濃縮法を最適化した。アセトン沈殿法とセルロースバッチ法を実施し、糖ペプチドの濃縮効率を評価した。並行して、LC/MS/MS条件、すなわちグラジェント時間と開裂エネルギー値等について最適化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由:当初の計画通り、各種レクチンを用いた血清試料からの糖タンパク質精製法ならびに糖ペプチド濃縮法の最適化が完了した。また、NEN患者血清を用いた予備的分析を既に開始しており、NEN特異的バイオマーカー候補の同定に向けて、研究は概ね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度最適化された方法を用いて、NEN患者血清ならびに健常者血清からペプチド/糖ペプチド試料を精製し、LC/MS/MSを実施する。NENの腫瘍バイオマーカー探索は、NEN患者血清32サンプル、健常者血清20サンプルから行う予定である。定量LC/MS/MSデータを用いた統計的解析により、NEN患者において有意に変動した糖タンパク質を抽出し、ROC解析による診断能評価を行い、AUC>0.8あるいは<0.2となる、高診断能を有するバイオマーカー候補を選定する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本来の予定よりも物品費が少なく対応することができたが、2024年度、その分、検査検体が多くなり、消耗品等の物品代が増えることが予想される。また2023年度の間に実施するべきであった、正常検体の採取、並びにそのスクリーニングにかかる人件費や謝礼等の費用負担が2024年度に増加することが予想される。
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