研究課題/領域番号 |
23K06722
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
布矢 純一 獨協医科大学, 医学部, 講師 (40466842)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | CAR-T細胞 / 疲弊 / 免疫チェックポイント / 膵臓がん |
研究実績の概要 |
本研究計画の目的は、膵臓がん組織での免疫抑制に関わる免疫チェックポイント分子であるVISTAに対する阻害抗体(ICI)を分泌するCAR-T細胞を作製することで、機能抑制回避能を併せ持った疲弊克服型CAR-T細胞を創出することである。これにより、膵臓がんをはじめとする固形腫瘍の治療改善に向けた道筋をつけることを目指す。 令和5年度は①膵臓がんに高頻度に発現するメソテリン(Meso)を標的としたCAR-T細胞の作製、②共培養に用いるVISTA発現免疫細胞の樹立を行った。CARの抗原認識部位として抗Meso抗体、ICIとして抗VISTA抗体に由来する単鎖抗体(scFv)の配列を用いた。scFvをコードする核酸配列は人工遺伝子合成により合成し、HVEMを共刺激シグナル配列として有するCARおよびVISTA阻害抗体を発現する組換えレンチウイルスベクター(LV)プラスミドを構築した。組換えLVは293FT細胞を用いて調整し、高速遠心によりウイルス液を濃縮した。健常人のリンパ球から単離したT細胞を抗CD3/CD28抗体磁気ビーズで活性化させ、作製した組換えLVを用いて遺伝子導入を行った。フローサイトメトリー(FC)での解析によりCARの発現を確認でき、CAR-T細胞を作製できたと考えられた。また、VISTA発現LVプラスミドをVector Builder社より購入し、上記と同様に組換えLVを作製した。急性単球性白血病細胞株(THP-1細胞)および慢性骨髄性白血病細胞株(K562細胞)に遺伝子導入し、ピューロマイシン選択により安定発現細胞株を樹立した。FCで解析したところ、15~35%の細胞だけがVISTA陽性であったため、セルソーティングによりVISTA発現細胞の純化を行った。セルソーティング後に再びFCで解析すると、ほぼ100%の細胞でVISTA陽性を確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りCAR-T細胞の作製および次年度以降の解析に用いる予定の細胞株を樹立できたため。
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今後の研究の推進方策 |
作製したCAR-T細胞から抗VISTA抗体が分泌されているかを解析する。がん・免疫細胞スフェロイドの培養系を確立する。樹立したがん・免疫細胞スフェロイドと作製したCAR-T細胞を共培養し、機能や性状の変化を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)作製したCAR-T細胞からの抗VISTA抗体分泌の検出およびがん・免疫細胞スフェロイドの培養系の樹立を次年度に行うことにしたため。 (使用計画)抗VISTA抗体の検出、がん・免疫細胞スフェロイドの培養系を樹立するために必要な試薬類を購入する。また、研究成果を発表するため、学会への参加費用や論文の投稿および出版費用に使用する予定である。
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